「一緒に悩んで笑って歩んでいこう 」大久保千鶴

障がいを抱える子の親となり初めて知る世界があった。この子がいなかったら、もしかしたら知らずに過ごしてきたことなのかもしれない。我が子がいて「障がいって何だろう?福祉って何だろう?」と考える機会を与えられたのだと思う。

NPO法人こすもけあくらぶは、平成14年に介護保険の居宅介護支援、訪問介護、訪問入浴の3事業でスタートし、翌年には通所介護を新設。住み慣れた家、地域で暮らしていくために不便さを解消していこうと当時から地域密着型に事業展開してきた法人である。

ディズニー大好きな利用者の誕生日会にて

当法人と出会ったことも何かの巡り合わせだったのかもしれない。重度の障がいや医療的なケアが必要な子どもたちの養護学校卒業後の居場所や選択肢がない実情を相談し、「じゃあ何が必要?準備するものは?どう動くことができる?」と順序立てて話をしていく中で、看護師だった私はそれまで働いていた医療機関を辞めて法人の一員となり、子どもたちとの道を歩み始めた。平成31年2月のことである。

同年5月、長野事業所1つ目の障がい児者通所施設「多機能型事業所こすもけあくらぶ」が開所となる。昨年10月末に法人名を「こすもけあ福祉会」と変更した。現在は、長野事業所長として通所事業2カ所、相談支援事業所1カ所、訪問看護ステーション1カ所を統括し、重度の障がいや医療的ケアを必要とする人たちの地域生活に寄り添うかたちで動いている。

事業所ができたから、子どもたちの居場所ができたからといって、これで終わりではない。自分が支援を受ける側として感じてきたことや願いをベースに、皆がより豊かな人生を送ることができるように発信していくことが大切だと考えている。思いをかたちにしたい、誰かの力になりたい、なければ創ればいい、そんな思いのスタッフが集まり活動している姿は今も昔も変わらない。

重度の障がいがあっても、医療的なケアが必要であっても、地域で家族と暮らしていきたい。人生の選択を自分でしたい。たくさんの人を巻き込んで生きていたっていいじゃないか。皆助け合って生きているんだ。一緒に笑って楽しんで人生を謳歌していきたいね。だから多くの人に知って欲しい。一緒に考えていきたい。考えて欲しい。

執筆: 大久保千鶴/NPO法人こすもけあ福祉会理事・長野事業所長
初出 : 長野市民新聞 NPOリレーコラム「空SORA」2022年5月21日掲載