自分らしいはたらき方を選ぶための「ママ&プレママのための自分はたらき方講座」報告会が12月18日に開催された。場所は佐久市内のコワーキングスペースワークテラス佐久。
約半数が出産を機に離職
日本では、一度離職した後、育児と両立しながら新たな仕事に就くことは容易ではない。約半数近くの女性が第1子出産を機に退職するという調査結果がある(2016年の国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」によると、全国で46.9%)。
出産、結婚、子育てといった人生の節目をきっかけに、生き方の方向転換を余儀なくされることが多い女性に、色々な働き方の選択肢を知り、これからの生き方を考えて欲しいと企画された。
「ママ&プレママのための自分はたらき方講座」は佐久市と株式会社ジェイアール東日本企画長野支店が主催し、Racoosa合同会社、team OHAYASHIが運営する。1年目(2019年)は「マイプロジェクト講座」と「テレワークスキルアップ講座」、2年目(2020年)は「はじめてのテレワーク講座」と「自分事業はぐくみ講座」の二本立て構成でそれぞれ実施してきた。
3年目となった2021年は2つの講座(各4回)で構成。自分にとって働く意味を深堀りする「じぶん軸ととのえ講座」と、自分と仲間の理解を深める「チームづくりとリーダーシップ講座」。
報告会前半は「じぶん軸ととのえ講座」、後半は「チームづくりとリーダーシップ講座」修了生が、受講を通して考えた「自分のはたらき方」について、それぞれ発表した。報告会は会場とオンラインをつないでのハイブリッド形式。発表内容を運営メンバーのエムラヤスコさんがその場でグラフィックレコーディングにまとめていく。
他の人の発表を聞き感じたことをポストイットに書き、発表の合間に本人に手渡す。受講者に配られた修了証には、ポストイットを貼るスペースが用意されている。「講座が終わった後も想いが薄れないように」という運営者の願いがこめられている。
自分のはたらき方と家族との関わり
修了生の発表からは、自分が育ってきた過程での親との関わり方、現在のパートナーや子どもとの関わり方など、家族との関係性が垣間見られる。
望月で夫と無農薬農業を経営する丸角佑理江さんは発表の中で、「自分のやりたいことをやるために、主人に子どもの寝かしつけをお願いした。その時『ナイストライ、忙しい中でよく挑戦したね』と言ってくれた。そのリアクションにはっとした。ナイストライの精神を大事にしていこう、と思いました」「(子どもを産んでから)8年間ずっともやもやしていた自分の気持ちが、この講座を通してはっきり明確になった。自分が自分らしく働ける道が見えてきた。本当に感謝しています」と語った。
リーダーシップ講座の講師を務めた馬締俊佑さんは「子育てが忙しい中で、心の声を聴く時間がないかもしれないが、ぜひこれからも自分の心の声を聴く時間をつくって欲しい。仲間がいてできることもあるので、講座が終わっても受講生同士がつながっていって欲しい」と話す。
いわゆる起業・就労セミナーとは異なり、起業件数や復職率の向上のみを目指した講座ではない。修了生の中には、営利・非営利で事業を起こした人、既にあたためてきた事業を続けようと改めて決意した人もいる。一方で、「今は働くことよりも、家族との時間を大切にしたい」というのも、自分で選ぶ選択肢のひとつだ。外の目線での評価を気にする必要はない。
成果報告会を通じて感じるのは、温かさだ。受講生としてではなく、個人の呼ばれたい名前でその人を呼ぶ。未来のありたい姿を語るその人の言葉を、大切にそのまま受けとめる。
個人としての「自分」を大事にすることと、収入を得て「働く」ことは両立できるのか。きっとその問いへの答えは、自分で選んだ働き方を切り開いた先に見えてくるだろう。講座修了生一人一人が、ここで出会った寄り添う仲間とともに。
過去3年間の講座のレポートは、はたらき方講座のサイトにもまとめられている。
(文:ソーシャルライター/佐久市市民活動サポートセンター コーディネーター 粟津 知佳子)