NPO法人が須坂市ハイランド1Fにオープンしたカフェ「ジュリアン」福祉とまちづくりの融合  

須坂駅前エリアのくつろぎスペース 
こだわりの焼き菓子でほっとできるひとときを!

須坂市ハイランド一階に、2024年3月29日にカフェ「ジュリアン」が開店しました。

この店名は須坂市民らよく知るはず。22年秋、惜しまれながら閉店した老舗人気パン屋さん「ジュリアン」跡地を利用し、その名前を引き継いだカフェ「ジュリアン」。実は、特定非営利活動法人「信州能力開発ネットワーク」が運営する「就労継続支援B型」※の新しい事業所の一つなのです。

店内スペースは9席。ナチュラルで明るく、家族や友人との午後のひとときを過ごすにはぴったり。一人でも気軽に立ち寄れる雰囲気です。

※「就労継続支援B型」とは、障がいや難病のある人のための福祉サービスのひとつです。企業などで働くことが難しい人に、就労の機会を提供します。働く知識を得たり生産活動の経験ができ、対価を受け取ることができます。

カフェ「ジュリアン」のメインメニューは、長野県産の小麦や発酵バターの風味を生かした5種のスコーンやカカオのパーセンテージが選べる生チョコレートサンドなどの焼き菓子です。クリームチーズサンドは、甘酸っぱいフランボワーズ・みずみずしいブルーベリー(430円)シンプルかつ濃厚なプレーンクリームチーズ(410円)香際立つ上品な抹茶・ほろにがキャラメルがクセになるキャラメルグラノーラ(420円)とカラフルで、見た目にも可愛く“映える”商品なので、手土産にもおすすめです。どれもテイクアウト可能です。現在ドリンクメニューはホットコーヒー・アイスコーヒー(350円税込)、りんごジュース(400円税込)の3種類ですが、これからすこしずつ増えていく予定・・・。

カフェの営業時間は11時オープンで売り切れ次第終了。4月は月曜休みですが、今後の営業スケジュールはジュリアンInstagramで随時発信していくそうなのでぜひチェックしてください。

フリーランス・パティシエールの宮下智衣さんに
商品開発ストーリーを聴く

今回、カフェをスタートするにあたりゼロから商品開発も行いました。専門家として、商品開発を依頼されたフリーランスパティシェ―ルの宮下智衣さんに、詳しい話を聞きました。

「多様な背景を持つ利用者さんがカフェの現場で、仕事に取り組みやすいことを前提に、さまざまな点を考慮しながら、商品開発をすすめました。

たとえば、工程はできるだけシンプルに分担作業しやすく、細分化する。焼き菓子の美味しさやクォリティを確保しながら、扱いやすい素材を選ぶこと。品質の管理のしやすさや維持、廃棄ロスの削減も考慮し、冷凍保存可能なクリームチーズを使うこと。スコーンは当日売り切りを目指し少量生産とすることといった点や、商品のラッピングをするときの動作では、クリアな袋に入れやすく崩れにくい形にすること。商品名シールを貼る・テイクアウト用の袋に詰める、箱に並べるといったひとつひとつの作業手順をスタッフと確かめあいながら試行錯誤を重ねていきました」

オープンのおよそひと月前に完成した商品は、長野県産小麦や、オブセ牛乳を使用するなど地産地消にこだわった、どれも自信作とのこと。

地域に長く愛される店。利用者さんも働く誇りを持てる店を目指して

カフェ「ジュリアン」を運営する非営利活動法人「信州能力開発ネット―ワーク」理事長の小森広樹さんにオープン直前、話を聞きました。

カフェ「ジュリアン」の誕生は、いくつかの偶然が重なりました。

もともと人気パン屋店「ジュリアン」のお隣に団体事務所があったご縁から、長年愛されているお店の閉店を知って、とても残念に感じたこと。また、すでに農作業や環境リサイクルといった分野での「就労継続支援」は行っていたものの、体力仕事が苦手な方や若い利用者の増加といった点からも、何か新しい形態を模索していたタイミングだったそうです。しかし、ジュリアンの跡地で、何かをはじめようと決めたものの具体的には決まってなかったそうです。

その後、ハイランドがある須坂駅周辺には、気軽に立ち寄れる喫茶店やスペースがあまりないといった現況や、利用者さんにとって「そこで働いてみたい、やってみたい」と思う、これまでと違った就労の場として、未経験ながら「カフェ」という業態に挑戦を決めたのだとか。店舗の改装や商品開発などを含め、およそ一年半の準備期間を経て、オープンの日を迎えたのでした。

小森理事長は、「SNSなども積極的に活用しながら、多くの方にジュリアンの場所や商品の魅力を知っていただきたいですね。スタッフが慣れていくことが当面の目標ですが、将来的には、私たちが育てている有機野菜の店内販売や、その野菜を使った新商品の開発なども取り組んでいけたらと考えています」

小森さんの言葉が一段と熱くなったのは、「来店客とのコミュニケーションを大切に、話題のカフェに行ってみたら、”期待以上の商品だった” ”心地よい接客でまた利用したい” ”また食べたいあの味”と感じてもらい、長く愛される店に育てたい」との思いを話した時でした。

それが結果的に、ジュリアンで働く利用者にとっても、自信や誇りにつながる。一人ひとりの可能性を広げる就労支援の場として、魅力的な事業所になるはず。「この街になくてはならないお気に入りのカフェは、たまたま就労支援B型の事業所だった」と言われる存在を目指しています。



福祉とカフェ、ものづくり、そしてまちづくりの融合……ソーシャルライターとして、多くの人に教えてあげたくなるカフェが須坂に誕生しました! ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。


                             ソーシャルライター 大日方雅美