緊急時の子ども支援コーディネーター育成研修が2025年11月25日、丸一日かけて長野市で行なわれました。主催したのは「NPO法人ながのこどもの城いきいきプロジェクト」で、全国初めての開催です。講師は、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)子ども支援ワーキンググループの3名で、グループワークを取り入れながら、密度の濃い研修内容でした。
災害をテーマに執筆活動をしている「ナガクル」のソーシャルライターとして、また防災士としてこの機会に体系的な知識と心構えを修得しておこうと思い、受講させてもらいました。どんな研修だったのか詳しくレポートします。
子ども支援のコーディネーションができる人を育成
会場は長野市若里の市民文化ホール2階の会議室。ここは今年7月、「緊急時の子ども支援の連携を考える学習交流会」が開かれた場所です。このときは小児科医会や防災士会の活動などを学び、日常的に連携することの大切さを確認しました。研修を主催した「ながのこどもの城いきいきプロジェクト」は「長野市緊急時における子ども支援ネットワーク」を立ち上げて支援団体が連携する仕組みづくりに力を入れていますが、今回の研修は、さらに進んで、緊急時に子ども支援の活動を担うことができるスキル(コーディネーション力)を持った人たちを育成するのがねらいです。「緊急時の子ども支援に取り組む地域への災害ケースマネージメントのノウハウ移転事業」として実施されました。今後は長野での諸活動をモデルとして、県内外にこうしたコーディネーター育成の取り組みを「移転」していくことになります。

学びの意欲にあふれた37名の参加者
会場に入ると5人のグループ分けで机が配置され、A4用紙を折って所属と名前を書いて各自が示すようになっていました。開始時刻が近づいて参加者が自分の席に着くと、グループ内で早くも名刺交換をしたり自己紹介をしたりしています。さすがコーディネーターとして活動していく意欲に満ちた人たちです。主催者のアナウンスがあり、飲み物を用意してあるとのこと。部屋の隅にティーパック、ドリップコーヒー、お湯のポットが置かれ、何種類かの甘いお菓子も並んでいます。主催者の心遣いが嬉しくなります。
研修開始に先立って附箋が配られ、講師から「研修に期待すること」「知りたいこと」を書くよう指示がありました。これはとても大切なことです。研修でも会議でも、その目的を明確にして臨むことは実りある結果につながります。私も会議のファシリテーションをするときは、最初に目的を確認してから始めるようにしています。研修の進め方のノウハウであり、「なるほど」と思いました。
参加者がどんなことを期待して研修に臨んでいるのか附箋から拾い出してみると――
☆体系的に学びたい。
☆セーフガーディングの知識。子どもとの距離感について。コーディネートする上で気を付けること。
☆コーディネーションの方法について。
☆災害時に子どもをどう支援し、守ってあげることができるか。
☆支援と支援者のWA輪が広がること、つながること。
☆様々な団体の皆様が集まられているので、緊急時にどのような動きや協力をされるのかを知ることができればと思っております。
☆災害ボランティアの知識をしっかり学び、非常時に活動できる自分を目指したい。
☆関係機関の皆様との接点が強まることを期待しています。
☆災害時に子どもたちを支援するときの言葉がけや接する時に気をつけることなどを知りたい。また、どのような連携ができるかを知りたい。
参加者は長野市、上田市など県内各地からで、被災者支援活動をしている人や子どもと関わる活動をしている人など37名。何を学びたいかが明確で、今後の活動に意欲的に取り組む姿勢に満ちていることが、記入された附箋から読み取れます(写真)。学ぶだけでなく、「つながり」をこの機会に得たいと希望している人がたくさんいることもわかります。

コーディネーターとしての知識習得とつながりの構築
研修の柱は、「災害時の子どもの状況と子ども支援」「災害時子ども支援コーディネーターの役割と業務」「災害時の子ども支援において必要な知識」でした。
最初に登壇したのは山田心健さん(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)で、導入のオリエンテーションを担当しました。山田さんは、研修の目的を二つあげました。コーディネーターとしての必要な知識を得ること、長野県内で災害時の被災者支援に関わる団体や個人とのネットワークを構築することです。参加者が附箋に記した研修の動機は、この説明としっかり合致していました。
最初に、グループのなかで“正規”の自己紹介タイムが設けられました。名前・所属と参加動機を発言し合うのですが、実は課題が設定されたのです。それは、全員の紹介を聞いて共通することを見つけることでした。それって、「連携」「つながり」を探るためのキーワードということか。二つ目の「なるほど」でした。
私のグループには、中間支援組織で活動する人、日常的に子どもたちに関わっている人、行政で子ども分野の仕事をしている人(個人参加)などでした。私もが3歳児家族を対象にしたイベントを開催していたこともあり、全員に共通することは、「子ども支援」でした。あまりに当たり前のキーワードになってしまいました。

子ども支援は子どもの「日常」を早く取り戻すこと
最初のセクションは「災害時の子どもの状況と必要な子ども支援」についてです。話は臨床心理士の本田涼子さん(NPO法人災害時こどものこころと居場所サポート副代表)に交代しました。
本田さんは災害に直面したとき、子どもがどんな心理状況になるかを具体的に説明しました。
「制服も学用品も流され、おもちゃも流され、勉強もできない」という状態になってしまい、学んだり、遊んだり、また自分の意見を表明するという子どもが持っているはずのさまざまな権利が守られない状態になってしまうと話しました。災害後の子どもは、「非日常」の生活に陥ってしまうということでした。
恐怖や喪失の体験をし、そのあと危険な状況から避難するため家や地域を離れます。避難先では不自由な生活を強いられ、子どもにとって大事な学校や部活、塾・習い事が中断してしまいます。いままでできていたことができなくなってしまうということであり、そうした「非日常」の状態から「日常」を少しでも早く取り戻すことが大切だと本田さんは説明しました。
急に起きた災害時は、とかく子どもたちへの対応が後回しにされがちです。子どもの対応に頭が回らないためです。本田さんの話を聞きながら、子どもたちが環境の面でも心の内面でも、どんな事態になっているかを理解し対応する必要性を改めて強く感じました。
6年前の東日本台風災害のとき、私は長野市の指定避難所・北部スポーツレクリエーションパークへ開設当初からボランティアで入りました。子どもたちが遊べる専用のスペースを設け、周りを囲んで区分けし、そこで「こどもの城」のスタッフが対応していたのを思い出しました。学校が休校になり、親は家屋の片付けに行って昼間は不在になります。子どもたちにとって、その場はかけがえのない安心できる空間でした。
本田さんが語った「災害によって子どもの権利が守れない事態になる」という説明は胸に突き刺さるものがありました。長野市が「子どもの権利条例」を制定するという動きを4回にわたって取材し、市民の願いを「ナガクル」にレポートした経験があったからです。災害に直面した子どもたちの支援をするにあたっての基本に「子どもの権利」を保障するという理念があるのを知って、熱い気持ちになりました。

分野別のコーディネーションガイドラインが作られていた
災害の発生と同時に支援活動を速やかにどう取り組むか。その指針を示してくれているのが、「JVOAD被災者支援コーディネーションガイドライン」です。このコーディネーションガイドラインは分野別に作られており、〈子ども支援〉のほか、〈被災者支援〉、〈家屋保全〉、〈食と栄養〉、〈物資支援〉、〈外国人への支援〉、〈多様性配慮〉が用意されているとのことです。それぞれホームページからPDFの資料をダウンロードすることができます。〈被災者支援〉は、災害後にいろいろな支援団体が入ったとき、支援が集中する所と不足する所が出てしまうことから、それを調整するための中間支援組織が必要であり、その活動をコーディネーションするための指針です。災害支援全体についてのガイドラインになっています。
いずれも支援活動をするうえで不可欠と言える貴重な資料であり、JVOADによって体系的に作成されていることを知って、私にとって「なるほど」の第三弾となりました。
ガイドライン|全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)
〈子ども支援〉のガイドライン(2022年3月)は、次の各章から成り立っています。
第1章 はじめに
第2章 コーディネーションの体制
第3章 本ガイドラインがカバーする範囲
第4章 コーディネーションに必要な知識
第5章 コーディネーターの役割・求められること
第6章 参考情報
このうち第3章の「ガイドラインがカバーする範囲」には、次の項目が明記されています。
①対象となる範囲
支援の対象者(被災地域の18歳未満の子ども・学生と、その保護者)
支援の主な対象場所(避難所、在宅を含めた指定外の避難先など)
支援の時間軸(支援の期間)
②支援に関係する組織・団体
③対象となる支援活動
居場所支援など7つの分野
7つの分野の支援活動を詳しく学ぶ
「支援活動」の内容は発災直後、3日後、1週間後、1か月後、3カ月以降でどんどん変わっていきます。本田さんは、ガイドラインに沿って、支援活動を詳しく説明しました。ガイドラインには、次の7つの分野の活動が示されているとのことです。
- 居場所支援(遊び、学習支援など)
- 子ども関連施設の再開支援
- 災害時のストレスとメンタルヘルスケア
- 緊急物資支援
- 経済支援
- 子どもの権利保護に関する啓発と権利擁護など
- 復興計画づくり(子どもにやさしい復興計画)
それぞれについて、本田さんが説明したポイントをみていきます。
「居場所支援」では、子どもたちには教育を受ける権利、遊ぶ権利があることが強調されました。子どもたちは大人と違って早いスピードで発達していきます。何日も何カ月も学べない、遊べないという期間があると、それは発達を遅らせ、健康を取り戻すのが難しくなると本田さんは説明しました。子どもたちの心や健康を支えられる安全な空間を作り、子どもたちが「ここは自分の居場所だ」と感じて成長を取り戻すことができるようにするのが居場所支援の目的との説明でした。
活動や支援を通して子どものレジリエンス(回復力)を引き出す大切さについての話もありました。ゴムボールに例えると、辛い体験がボールを押す力で、自分の力でもとの形に戻すのがレジリエンスです。子どもたちの居場所では、これを大切にしたいとのことでした。
6年前の避難所を思い出しました。ホワイトボードに応援メッセージを書き込みお互いに励まし合いましたが、子どもたちもそこに頑張って乗り越える気持ちを書き込んでいました。自分の内面的な力で困難に打ち勝とうとしていたのです。
連携不足で支援が偏ってしまう、特に中高生の支援が不十分といった課題や、避難所にいる子どもについては対応ができても在宅避難の子どもたちは忘れられがちになることも指摘されました。
避難所にいない在宅避難の子どもたちが利用できる居場所の確保も必要であり、大切な指摘と思いました。6年前、食支援の面でも、避難所の人たちには弁当が提供されていましたが在宅避難者には届いていませんでした。その人たちは食事に困っており、私が有志に呼びかけて被災1週間後に始めた炊き出し活動も在宅避難者に向けたサポートでした。

「子ども関連施設の再開支援」では、学用品や制服が流失しており、その喪失感からの回復が重要になるそうです。それらを揃えるのに既存の制度や保険では時間がかかり、また対象品目が限られている問題があるとのこと。さらに手続きが複雑なため、スピード感をもって必需品を支援する必要があるとの説明でした。
「災害時のストレスとメンタルヘルスケア」では、専門家チームと連携しながら活動するとともに、子どもたちがどういう心の状態にあり、どう接すればよいかを学ぶ研修が必要との説明でした。
災害後に子どもたちの心を傷つけずに心のケアになることをどうやっていくかが大事と本田さんは言います。「害を与えない」配慮が必要で、よかれと思ってやったことでも、子どもや家族の心を傷つけてしまうことがあると話しました。例として挙げたのが、「あのときどうだったの」「どんな体験をしたの」と聞き出すことだそうです。そうした質問が大事だとされた時代もあったけれど、いまは心の状態を悪くしてしまうことがわかり、やってはならないことだとの説明でした。「治癒的遊び研修」というものもあるそうです。
「子どものための心理的応急処置」は支援に必要な知識であり、子どもたちの周囲の大人が平時から心のケアに関する知識を学んでおけば、PFA(心理的応急措置)がスムーズにできると指摘しました。このテーマは午後からの研修に位置付けられていました。
「物資支援」では何が必要かを把握して、急いで揃える必要があります。近年は災害が頻発しており支援の機運が高まったことからさまざまな物資が大量に集まるようになったものの、子ども用は十分でないそうです。子どもには様々なサイズのものが必要になります。そうしたニーズに応えられない実態があり、特におもちゃが不足しがちとのことでした。逆に、お菓子はいっぱい集まってしまい、食べ過ぎて体によくないことが起きるそうです。
「緊急子ども用キット」というものがあって、そのなかには衛生用品とか一人で遊べるおもちゃなどが入っていると紹介がありました。
学校が再開されると学校を通して一応に支給されますが、それまでが支援の不足・偏りが生じるとのことです。この面でも、在宅避難者の支援が課題になるようです。
どんなに「非日常」でもあっても、子どもや子育て家庭に必要な物品が行き届いているかが重要で、避難所の被災者・在宅避難者ともにニーズをしっかりと把握し、迅速に対応する必要を本田さんの説明から強く感じ取れました。物資に関する情報にアクセスしやすいこと、伝わることが大切だとの指摘もありました。
ふと頭をよぎったのは、防災倉庫のなかに、小さな子ども向けの物資がどの程度備えられているのだろうかとの疑問です。確認してみなければと思いました。
ガイドラインには、行政や民間による支援、支援の不足や偏りにつながる要因が詳しく説明されていました。子どもたち向けの物資を提供してもらえる企業などと平時から連携できていれば、ニーズに沿った支援の要請を迅速にできると考えられます。

「経済支援」も重要です。支援制度の周知が不十分だったり、行政支援制度の申請を躊躇してしまったりする現実があるとのことでした。また既存の制度の内容や金額が不十分なこと、民間支援制度は不安定なことなどの問題があるとの指摘でした。
受験を控えた子どもたちが学習机や教科書、参考書が流されたとき、どうやって受験勉強をするのか。学校へ通うための自転車がないとか、幅広い面で支援が必要とのことでした。
そして、経済支援を考えるときの大切なこととして、もともと困窮していて生活が苦しいという家庭がより苦しくなることに目を向けることだと説明がありました。子育て中の家庭は経済的にもたいへんなので、被災したときの心配事はいっぱいあるんだろうなという気持ちが湧き起こりました。
「子どもの権利保護に関する啓発や権利擁護」については章立てて位置づけられていました。子どもの権利が子どもの支援におけるベースになっていることを、ここの説明で改めて詳しく知りました。避難所や家庭での暴力を防ぎ、特別な配慮が必要な子どもたちについても「災害だから我慢する」ということではなく、きちんと権利が守られるようにすることが指摘されました。災害の影響で、より脆弱な状況に置かれる子どもたちについては、相談し、適切な機関につながることができる体制の構築が必要とのことでした。
子どもの権利を尊重し、配慮が必要な子どもたちへの支援というのは、平時から取り組んでいるかどうかが大きいと本田さんは指摘します。災害が起きてからでは難しいとのことです。災害支援の取り組みでは、平時からの連携が強調されていますが、災害という視点だけでなく、子どもの権利や配慮が必要な人たちへの理解が日常的にどれだけできているかが、災害時に影響するということを理解しました。
「復興計画づくり」では、子どもたちが参加することを求めています。子どもたちの声が届き、参加を促すことの大切さだと本田さんは話しました。これも平時からの考え方が大事とのことでした。「子どもにやさしいまちづくり」を掲げている自治体では進めやすいと言います。そうでなかったとしても、大人が決めてしまうのではなく、子どもたちの声を聞いて復興計画を作り、災害をきっかけに子どもたちを地域づくりに参加させてほしいと呼びかけました。
日本はまだまだ災害が続き、子どもたちがこれからの災害対策を担っていくことになるので、その意識や経験を培っていくことが大切との説明でした。
「子どもの権利条約」第3条の「子どもの最善の利益」や、第12条の「子どもの参加」についても触れながら、子どもの声を拾い上げることを本田さんは強調しました。
避難所の様子を受けとめて、子ども支援の活動をどう進めるか
7つの分野における支援活動の説明を受けた後、しっかり理解できたか確認するためのグループワークが行なわれました。発災から1~2週間程度の時点でのケースストーリーが文章で示され、話し合いました。
避難所における子どもたちの様子がリアルに示されていて、在宅避難している家庭からの要望も含まれています。7つの分野の支援活動を、どのように具体的に進めるかを考えてみるのです。
避難所で子どもたちが日中、手持ちぶさたでおり、走り回ってクレームが出ています。中学生が幼児を見ていたりする現状もあります。これを解決するためには、早く居場所を設ける必要がありそうです。お腹が痛いと訴えたり、イライラした様子で物にあたったり、慣れた食べ物でないために食べられない子がいます。これはメンタルのサポートや専門的対応ができる人につなぐ必要がありそうです。子どもの遊び場に必要な物資も手配する必要があります。
話し合っていると、学校が避難所だったなら教室を開放してもらう、遊びの部屋だけでなく親の悩み相談にのるスペースを設ける、中学生の学びの場を設けるなどのアイデアも出てきました。さらに地震だった場合は余震のときすぐ逃げられるよう1階にしようなどの提案がありました。
避難所の様子のイメージを浮かべながらグループ討議で課題解決の方法を探りましたが、これまで支援活動を体験した人がいたことや、集団で考えを交流することによって問題解決の力が発揮させられることを感じました。話し合いが進むうちに、どこの団体や企業に力を貸してもらえばよいか連携先も見えてきました。
講師の話を聞いて終わりでなく、グループワークによって学んだことを即座に実践的に活かす、それも集団でやってみるというこの研修の進め方は、私にとって、またも「なるほど」でした。

子ども支援は中間支援組織の活動に位置付けて展開する
午後はグループ編成を新しくして、研修のテーマは「緊急時の子ども支援コーディネーターの役割と業務」でした。担当は社会福祉士の小野道子さん(NPO法人災害時こどものこころと居場所サポート代表)です。
冒頭で、「長野市緊急時における子ども支援ネットワーク」が作成した「長野市緊急時の子ども支援ガイドライン」の紹介がありました。2024年4月にできたもので、A4判24ページの冊子です、支援体制、活動の留意点、特別な配慮が必要な子どもへの留意点、感染症対策、連携に向けた平時の備えなどが載っています。
小野さんは災害時の子ども支援コーディネーションがなぜ必要なのかについて、「関係者同士の連携や調整不足がこれまでの災害のなかで明らかになってきたから」と説明しました。これは必要な支援が届かない状況が生まれてしまうということです。発災直後から子どもの状況を速やかな把握し、子どもの安心・安全な生活を確保するための適切な支援をするためには、子ども支援分野のコーディネーションが必要となります。
子ども支援コーディネーターは単独で動くのではなく、長野県の場合は長野県災害時支援ネットワーク(N―NET)、長野市では長野市災害ボランティア委員会や長野市社協などの災害中間支援組織の活動のなかに位置づけられ、「長野市緊急時における子ども支援ネットワーク」に属するメンバーとして活動するとことになるとの説明でした。

この体制については「ネットワーク」事務局の廣田宣子さんから詳しく説明がありました。JVOADのガイドラインをベースにして長野市ベースに落とし込んだものとのことでした。〈応急対策期〉と〈復旧・復興期〉に分けて作られています。三者連携(長野市×市社協×長野市災害中間支援組織)の情報共有会議で出された情報のなかから、子ども支援に関わるものを拾うこと、また共有会議に情報を入れていくことで支援につなげていくとの説明でした。
さらに、情報共有会議だけで不足する部分も出てくるので、行政の長野市(窓口・こども政策課)および長野市社会福祉協議会(窓口・地域福祉政策課)とも直接連携するとしています。また〈食支援〉など他の分野とも連携していくとのことでした。
復旧・復興期においては住民自治協議会、学校、PTA、ボランティア団体と連携し、被災地のニーズに合った支援を届けていくことが重要であり、地域の人たちといっしょになって体制づくりをしたいと説明しました。
廣田さんの説明は、長野市における子ども支援体制についての具体的な解説であり、どのように活動が展開されていくかイメージがつかめました。これは6年前の東日本台風災害時の支援活動の反省に立って作られた「しくみ」です。


ワークショップで連携先を検討する
今回の研修の目的として、前述したように支援に関わる団体・個人とのネットワークの構築が掲げられていましたが、その実践としてのグループワークへと進みました。支援活動別にどこと連携するか実際の固有名詞を書き出しながら検討するという、コーディネーションの実践と言える作業でした。
グループごとに検討する分野が示され、私が属するグループは「子どもの権利保護に関する啓発と権利擁護」でした。連携先が次々に挙げられました。長野市子ども政策課、障害福祉課、教育委員会、長野市社会福祉協議会、法務局、人権擁護委員、児童相談所、保健所、弁護士会、長野市災害ボランティア委員会、こどもの城、小中学校、保育園・幼稚園、認定こども園、児童センター・子どもプラザ、住民自治協議会、医療機関、長野市小児科医会、チャイルドライン、フードバンク信州…。
適格なコーディネーションをするためには、どんな組織・団体が地域にあって、どんな活動をしているか幅広い知識と情報を得ておくこと、そして日ごろから関係を築いておくことが必要だと感じさせられるワークでした。


「子どものための心理的応急処置」に基づく対応
最後のセクションは「災害時の子ども支援において必要な知識」についてでした。担当した山田さんは、「学校の近くで火事が起きて多数の負傷者が出ているとき、現場で会う子どもたちはどんな気持ちになっていると思うか」と問いかけました。頭のなかで様子をシミュレーションし、子どもたちの気持ちを想像しました。
山田さんによると、危機的状況後に、すべての年齢の子どもたちが示す一般的な反応としては、再度同じようなことが起きるのではないかという不安、自分の大切な人や自分自身が傷ついたり離れ離れになってしまうのではないかという不安があり、泣いたり睡眠の問題が生じたりするとのことです。
年齢ごとに示されるストレス反応の詳しい説明があり、この症状を知っていることの大切さを感じさせられました。
子どもたちと接する上で必要な知識が、「子どものための心理的応急処置(PFA サイコロジカル・ファースト・エイド)」です。PFAは年齢に関係なく国際的にも広く活用され、日本でも普及が進んでいますが、子ども場合は年齢発達段階に応じてかかわり方が変わってくるとのことで、そのために子ども向けに抜き出したのが「子どものためのPFA」です。

PFAは専門家にしかできないものではないそうです。無理に話を聞き出すものでないことこと、被災者が語るのを聞くことはあっても、感情や反応を聞き出すものではないことなどの注意点の説明がありました。
いつPFAが使えるかについては、大規模災害時だけでなく、子どもたちが日常生活で遭遇するかも知れない事件や事故、そのほかの危機的な状況が発生したときも有効とのことです。子どもは大人とは異なる反応や考えを示し、年齢によって必要とする支援が異なります。子ども特有のニーズによって、緊急時の悪化した環境に脆弱であることからPFAを使う必要があります。
実際のポイントについて、準備・見る・聴く・つなぐという方法の説明と、事例の紹介がありました。良い言葉がけが心の支えになるとのことです。
その事例として「何かお手伝いできることはありますか?」「本当に大変でしたね」「今、私にはわからないので調べみます」「そんな風に思うくらい辛いんですね」「何ができるか一緒に考えてみましょうか」といった会話が紹介されました。
子どもたちが“災害ごっこ”をして遊ぶことがあり、そのときどのように対応すればよいか事例の紹介がありました。胸に落ちる説明でした。子どもたちが“災害ごっこ”を始めたとしても、むげに止めるのではなく、見守るというやり方があるとのことでした。
多くの子どもは、▽親や養育者と再会できる、▽基本的なニーズが満たされる、▽危険な状態から抜け出して安全を感じることができる、▽PFAのサポートを受けるとき順調に回復するとのことです。

子どものための心理的応急処置(子どものためのPFA)|セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
セーフガーディングを理解するワークショップ
最後のセクションは、「子どものためのセーフガーディング」でした。これは次のように定義されています。
組織の役職員や関係者によって、また事業活動において、子どもにいかなる危害も及ぼさないよう、つまり虐待・搾取や危険のリスクにさらすことのないよう努めることであり、万が一、活動を通じて子どもの安全にかか わる懸念が生じたときには、しかるべき責任機関に報告を行い、それを組織の責任として取り組むこと。
支援活動にあたっては、この行動規範を遵守することが求められ、そのことを子どもたちへ掲示などで周知し、保護者にも理解してもらうようにするのだそうです。長野市のガイドラインのなかに様式が掲載してあり(下の写真)、支援活動をするにあたってはすべての団体の関係者一人ひとりに同意・署名してもらうようにしています。支援活動中に子どもの安全にかかわることがあれば随時共有して対応し、活動後も振り返るのだそうです。

セーフガーディングの説明を受けた後、グループワークによって理解を深めました。避難所における様々なストーリーが示され、適切な対応をどのようにするか検討しました。私のグループでは、まず次の事例を検討しました。
「被災した子どもたちを励ましに、ある日突然お笑い芸人さんがやってきました。コントを披露した後、その場にいた子どもたちにおやつやおもちゃを配っていました。同行していたテレビレポーターは、子どもたちにインタビューし、記念撮影をしました。帰り際には、子どもと連絡先の交換をしていました」
話し合いで何が問題で、どう対応すればよいか意見が次々に出されました。保護者や本人の許可なく写真を撮るのはまずいのでは、そもそも事前に許可なく突然来るのはおかしい、おやつやおもちゃを配るのもよくない、連絡先の交換はダメなどの意見が出ました。
この事例について山田さんからは、突然に来ることもあるけれど、対応策としては、この場がどういう所かの説明やセーフガーディングについて伝えることが大事であること、突然来られたときは対応できないけれど事前に来られることがわかるときは家の方や本人の同意を得ること、インタビューが子どもたちにとってトラウマになってしまわないようにスタッフがきちんと付いて対応することが求められるとの助言がありました。
次の事例「活動の途中、トイレに行きたくなった女の子がいました。トイレは離れたところにあるため、トイレまでスタッフが1人付き添っていきました」では、1対1で行くのは不可であり、複数人で行く必要があるとの意見が出されました。
山田さんからの助言は、災害時であってもスタッフと1対1は誤解を招くこともあるので、性別を配慮することとスタッフの人数が限られているときは他の子どもたちをいっしょに連れて行くことが必要との説明でした。
各グループでセーフガーディングにそって検討した結果を発表し合い、理解を深めることができました。
「修了証」を受け取り、研修後も交流が続く
あっという間に時間が経過し、最後は「修了証」の授与です。全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)子ども支援ワーキンググループから、全課程を修了した33名一人ひとりに「修了証」が手渡されました。甘いお菓子とコーヒーが功を奏したのか参加者は疲れを見せず、研修終了後も、この機会をとらえてつながろうと交流が続いていました。
研修全課程修了者は、本人の意向を確認の上、長野市緊急時における子ども支援ネットワークのコーディネーターとして登録され、子ども支援の先頭に立って活動していくことなります。
参加者からは次のような感想が主催者に寄せられました。
〇今までと異なる視点で子どもへの支援方法を実感できた。
〇プログラムの内容が良く、グループワークで立場が異なる方々と意見を出し合い、答えを探ることで学びが深まった。
〇社会資源について(知らないことばかりだったので)理解深められた。
〇コーディネーターとして活動するにはもっと訓練が必要と感じた。



長野 子育て支援 | NPO法人 ながのこどもの城いきいきプロジェクト
【補足説明】プロジェクトやガイドラインの位置づけが、「災害時~」ではなく「緊急時~」としているのは、災害以外であっても、子どもたちとっての緊急時に対応するためです。
〈緊急時の子どもコーディネーターの広がりを願って〉
本稿は研修の内容を詳細にレポートしました。それは、災害をテーマとするソーシャルライターとして緊急時の子ども支援コーディネーターの必要性を痛感し、育成の輪が広がって欲しいと強く願ったからです。コーディネーターとしてどのような知識を持つことが必要かを本稿によって知ってもらいたいと考えました。
今回の研修は全国で初めての開催でしたが、この育成研修は長野県内はもとより全国各地に広げていく予定です。その輪の広がりの一助になればと思います。
そして、もう一つの願いは、各地の災害中間支援組織のなかに〈子ども支援の分野〉が位置づけられ、その視点で支援活動をするネットワークが広がることです。6年前の台風災害を機に、長野市では「長野市緊急時における子ども支援ネットワーク」が誕生し、先進的な取り組みを積み重ねてきました。このプロジェクトが重視しているのは平時からのつながりです。台風災害の支援活動がきっかけで防災士になったソーシャルライターとして、そうした子ども支援のネットワーク作りの機運が高まることも願い、本稿が少しでもお役に立てば嬉しく思います。
自分の受けとめや感想をまじえた報告でしたが、長文をお読みいただき、ありがとうございました。
ソーシャルライター 太田秋夫(防災士)
【追 記】
研修は10時半に始まり、16時まででした。一方的な講義ではなくグループワークを取り入れたワークショップ形式で行なわれ、開始に先立って示されたスケジュールどおりに進行しました。
意欲的な参加者が多くて短時間のグループワークでも充実した話し合いができたこともありますが、会場の設営や参加者をつなげる工夫など講師と主催者による的確なファシリテーションによって集中することができ、充実した研修になったことに心地よさを感じました。
近年はワークショップ形式で行なう研修や話し合いが広がっており、今回の研修は講師によるファシリテーションによる進行の面で、研修内容とは別の観点からも学びにもなりました。いろいろな気づきによる「なるほど」が研修中たくさんありましたが、充実した研修の進行が、もっともビックサイズの「なるほど」でした。






