#コロナ禍で増える子どもの自殺

コロナ禍で増える子どもの自殺

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執筆者:松井明子 (ナガクルソーシャルライター)
 2021.3.29

昨年から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界で大流行し始めました。日本国内では2020年1月15日、長野県内ではその約1ヵ月後に最初の感染者を確認。2021年3月28日現在、陽性者(患者等)は2711例目まで確認されています。未だ収束せず、感染予防のための生活様式の変化、仕事や学業への影響で、大人はもちろん子どもにかかるストレスは大変大きくなっています。

未成年者の自殺率が高い長野県

日本全国では年々、自殺死亡率がゆるやかに下がってきていましたが、2020年の自殺者数が11年ぶりに増加。特に女性や小中高校生の子どもの自殺者数の増加が目立ち、全国で479人の小中高校生が自殺しました(前年比140人増)。

文部科学省「令和2年 児童生徒の自殺者数に関する基礎資料集」から抜粋

長野県内では、コロナ禍前から全国の中でも未成年者の自殺死亡率が高く、平成21年以降、全国平均を上回る年が続いてきました。

長野県 保健疾病対策課「未成年者の自殺の現状及び対策について」より抜粋

もともとの自殺者が多い状況下で、コロナ禍がますます子どもたちが生きる環境を厳しいものにしています。

つらいときに自分の気持ちを話せる場

子どもが悩みを抱えたときに、その気持ちを否定せずに受け止めて聞いてくれる人がいることで前を向けることがあります。

そんな子どもたちのためにと全国で取り組まれているのが、研修を受けた電話の「受け手」の大人が自ら電話してくる子どもの話を聴き、気持ちに寄り添いサポートする「チャイルドライン」。全国70団体、県内4団体が連携し活動しています。携帯電話が普及したため自宅に電話がない家もあり、また電話での直接対話が苦手な子どももいるため、いろいろな手段でアクセスできるようにと、電話だけでなくチャットでも受け付けています。

県内では、2020年は2019年に比べて電話の件数が増加。長野県チャイルドライン推進協議会では、「コロナ禍を理由に電話を掛けてくる子どもは少ないが、学校で『密にならないように』と言われたり、消毒やマスク着用など、生活環境が変わり生きづらさにつながっているのではないか。よく話を聞いていくと、コロナの影響を受けていると感じる」と話しています。

また、「子どもは悩みを抱えているとき、よそよそしさなどのしぐさで必ず何かしらの発信している。自分の子だけでなく、身近な子どもたちに日ごろから声をかけ、『あなたのことを気にしているよ』ということを伝え、何か変化があったときには見過ごさないことが大事」と訴えます。

人に相談をするなどして自らアクションを起こせている子どもは、自ら解決する力を持っていますが、一方で誰にも相談せず思いつめる子は死の選択に進んでしまいかねません。

「子どもの話を聴くことと同時に、命の大切さや子どもの人権について伝える活動も大切」としています。

「子ども第三の居場所」で子どもたちを見守る

チャイルドラインのように、匿名で相談できる場だけでなく、ゆるやかにつながる「第三の居場所」で子どもたちを支える大人もいます。

長野市三本柳西で「子ども第三の居場所」を開くNPO法人にっこりひろばは、コロナ禍でも居場所を開き続けています。

旧JAグリーン長野三本柳支店の建物を活用して開く「にっこりひろば」は、子どもに限らず誰でも利用でき、日中、放課後、夜の居場所を提供。三本柳小学校の児童をはじめ、不登校の子、地域の親子や高齢者など様々な年代の人が訪れます。

3月から5月にかけての臨時休校期間は、児童センターやプラザに登録していない子どもたちの居場所を確保しようと体制を整え、午前から午後までオープンして子どもたちの預かりをしました。

コロナ禍前の放課後利用は毎日20~30人程度。3月23日現在は放課後は10人まで、夜は制限なしで開いています。

子どもたちは、宿題をやったりカードゲームで遊んだり、自分の好きなことをして思い思いに過ごします。やってくる子どもたちの顔ぶれはおおむね決まっているので、自ずとちょっとした変化に気づくという代表の岡宮真理さん。「『今日はうれしそうだな』『いつもと様子が違うな、大丈夫かな』と感じることがある」と話します。

NPO法人にっこりひろば代表の岡宮真理さん

クラス替えの後やコロナ禍の休校期間明けは、何となく落ち着かなかったり、気持ちが沈んでいる様子の子も見られたそうですが、保護者から「学校の環境が変わっても、いつもと同じにっこりひろばがあったから、いつもの日常を取り戻すことができて良かった」という声ももらったといいます。

同年齢の子どもの交わりとは違う、知らない子同士や学年を超えた縦の関係ができるのも、このような地域の居場所の特徴です。

2020年6月から始めた夜の居場所では夕飯の提供をしてきましたが、感染拡大以降は弁当を持ち帰ってもらう方式に変更。本来でしたら同じ場で食事を共にしたいところですが、子どもの安全を確保して居場所を開くことを優先し、食事は控えることにしました。

にっこりひろばの活動は、子どもの自殺予防に直接的に関わるものではありませんが、岡宮さんは、「落ち込んだりしたときに、『頑張ってみよう』と思い出してもらえる人、場所でありたい。ゲートキーパーでありたい」と、子どもたちに目を配ります。

社会全体で子どもを育てる

家庭や学校という固定的なつながりだけでなく、全ての大人が社会全体で子どもを育てるという意識で地域の子どもと関わることの大切さを感じます。関係づくりは一朝一夕ではできないからこそ、地域の大人が地域の子どもを見守るという「当たり前」を続けたい。そして、助けを求める子どもがアクセスできる手段を多く持てるように支援体制を整えることで、大切な命が守られるようにと切に願います。

取材:2021年3月23日 にっこりひろば

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