「親子の孤立をふせぐ… 宅食便スタート」岩間千佳

NPO法人えんまるは、市内で「訪問型病児保育」事業を行い今年で4年目(2021夏時点)になりました。「こどもの急な発熱。でも会社は急に休めない…」そんな時に親御さんに代わり、病気のお子さんをお預かりする取り組みです。

公的な機関や地域で居場所を作り、手を差し伸べている人達がいるのですが、支援を受ける側に情報が届いておらず、「つらい…」「助けて…」の声をあげる事ができない。この活動の中で、困窮・孤立しているひとり親の家庭がたくさんあることを、目の当たりにしてきました。

そして、2020年のコロナ危機。「SOSの声を一層あげる事ができなくなっている…。なんとかしなければ…」その思いひとつで2020年8月、困っているひとり親家庭に向けた支援として、食材を届けて、つながりを作る「こども宅食えんまる便」を始めました。

まず、食品を届けて困っているご家庭とつながります。そして、スマートフォンを使ったサービスLINEや毎月一回の配送時の受け渡しを通じて、利用家庭の食を守りながら、継続的な関係性を作り、必要な支援を行います。単に食材を渡すだけでなく、孤立している家庭とつながることで、「だいじょうぶですよ。ひとりじゃないですよ」。そんな、見守られている安心感をもってもらうことが大きな目的です。

毎月3世帯を目安に支援数を増やし、8月は31世帯86人に届けました。10月には、100人を超える規模になってきています。現在、県立大学こども学科と協働して、梱包作業を大学施設内で学生と一緒に取り組んでいます。

2021年8月は新聞紙バックを使ってお届けしました


利用者からは「私ひとりで全部をやらなければいけないプレッシャーがあったが、いろんな人に助けてもらっているということが心の支えです。気持ちが楽になった」との声をもらいました。

定期的に食材を届けて親子の食を守りながら、継続した関係性を築き、親子の孤立を防ぐ「こども宅食えんまる便」。この活動は、企業、各種団体、お寺など多くの人からの食材、日用品や活動資金の支援によってなりたっています。

従来の方法にこだわらず、既存の取り組みの枠を超えて、各分野・地域のみなさんと一緒に、こどもたちの未来をつくっていきたいと考えています。

文責:NPO法人えんまる 代表 岩間 千佳 (いわま ちか)
初出 : 長野市民新聞 NPOリレーコラム「空SORA」2021年9月18日掲載