オランダへの移住者が語る。エコ事業とハイテク農業に驚く!

神様は世界をつくったけれど、オランダはオランダ人がつくった

1300年代から海を陸地にする干拓を続けたオランダ。防波堤をつくり、風車を利用して揚水し、用水を管理するシステム。そして地域ごとに水路を管理する数々の組織。国土を築きあげてきた長い歴史があってか、オランダの人たちは「なんでも管理できる」と考えるのが常らしい。

長野市の中山間地からオランダへ2021年末に転居した、スティーブン・マックグリービーさん一家。小布施町で「30年後の学校給食」をいっしょに考えてきた「OBUSE食と農の未来会議」の仲間が2022年2月24日、オンラインで現地の様子を聞きました。

山がなく、どこまでも「まったいら」。活断層がないから地震もない。2月のオランダも季節は冬。雪はないが雨と曇りの毎日で風が強く、とても寒いそうです。

山に囲まれた長野県では想像もできなかった「まったいら」な景色
(以降の写真もスティーブンさんの提供です)

みんなで見つけた答えが「自転車」

「なんでも管理できる」と考えるオランダの人たちが長い時間をかけるのが、みんなでの議論。肩書や上下関係もなく誰もが平等に、みんなが発言できる場で「より良い結論を出す」ために費やす時間。開かれた前向きな議論を通して「みんなで管理できる解決策を見つける」のだそうです。

そんなオランダの人たちが行きついたより良い交通手段が「自転車」。みんなが自転車を持ち、家には自転車置き場の小屋が付いている。その保有台数は、人口の1.5倍ほどにもなる。道路も信号機も自転車用に整備され、自動車より自転車が優先される社会。かつて自動車が社会に出回りはじめた頃、増える事故に巻き込まれる子どもたちを救うために、自転車を選んだとのこと。まったいらな地形にもあっていたようです。環境にも健康にもよく、エコな自転車。用途に合わせて車種も多様。みんなでより良い結論を出して社会を変えたオランダに学ぶことは多いようです。

一方で、長野市街地を見渡せば、道路は自動車が最優先。交通渋滞を解消するために道路が拡張され便利な道路ができたかと思えば、通行台数が増えてまた渋滞が起きるイタチごっこ。拡張された道路を渡るための横断歩道は距離が長くなり、高齢者は渡っている途中で変わりそうな信号に慌てながら息を切らす。歩道橋や地下通路があっても高齢者や自転車には、つらいだけ。自転車が走れる歩道は歩行者との境界がないうえに、段差やマンホールなどの障害物ばかりでガタガタと走りづらい。多少の距離も段差もさほど気にならない自動車がもっとも快適に走り回っていて、歩くしかない小学生や高齢者と、通学や通勤の自転車がやたら苦労しているように見えてしまいました。

エコと不思議な話

話をオランダに戻します。ゴミの分別と処理をたずねたところ、家での分別は4区分。①パッケージ、②紙、③生ごみ、④リサイクルできないもの(土に埋めるもの)。ただし、パッケージは缶も牛乳パックも容器もすべてがいっしょの区分と、ちょっと不思議な感じ。
生ごみは、キッチンに小さなビンを置いて入れ、溜まったら回収業者のコンポストへ入れる。そのコンポストを業者が回収して、新しいコンポストをまたプレゼントしてくれる仕組み。
回収した生ごみはバイオガスになり、地域一帯の住宅を温める床暖房システムに利用されるそうです。

しかし、町中にたくさんあるゴミステーションは、①ガラス、②紙、③服、④パッケージの区分。ここでの問題は、満タンになると外へあふれ出ているパッケージ。エコを意識するオランダ人が、なぜ放置しているのかわからないとのこと。そして、野外にはイヌのウンチもそのまま放置されていると、不思議がっていました。

家庭ごみの4区分 なにを入れるのかはイラストで想像できます
左上は分別マークと色で分けられたゴミ箱。左下はあふれ出たまま放置されているゴミステーション。右側はペットボトルや缶を入れるとお金やポイントが返ってくる回収システム。

スーパーでのハイテクな買い物と表示

スーパーの入口でハンディスキャナーを持って、商品を自分でスキャンしながら買い物カゴに入れて歩けば、最後はレジがいらないハイテクなシステム。自分のスマホを使ってスキャンする店もあるそうです。
スマホのアプリには、さらに便利な機能も。商品によっては「塩分が多いので注意した方がいい」といった健康管理に関する情報もその人にあわせて提供してくれるとか。

商品に付けられたラベルが多いのも特徴だそうです。有機を意味するBIOはもちろん。どんな商品にも有機バージョンが揃っているとのこと。フェアトレードを表すマークや、養殖魚ASCと海の魚MSCを区別するマークアニマル・ウェルヘア(動物への配慮)の程度を示す1~3段階のスターマークなど。
ちなみに、SUSHIはどこのスーパーでも手に入るそうです。

大型でハイテクな農業

まっ平らな地形を活用し、「なんでも管理できる」と考えるオランダ人らしく、大型でハイテクな農業が多く、グラスハウス(日本によくあるビニールハウスではなくガラス製)で、24時間ノンストップ栽培という施設もあるとのこと。野菜や花を中心に、より少ない水とエネルギーで温度をコントロールし、虫や病気が入らないように徹底管理すると言います。そんなオランダでの問題は、土地の値段が高くて簡単に農地が手に入らないことだそうです。

なにが良いのかをみんなで話し合って決めるオランダの人たち。
自動車より自転車を。生ごみをバイオガスに。商品を選ぶ多様なマークなど。より環境にやさしい暮らしを選択してきた人々。子どもたちのために、社会のために、その姿勢はぜひ見習いたい。持続可能な社会をつくるために、日本でまず必要なことは、立場や業種に構わず損得を抜きにして、こどもや学生たちも交えて「なにが良いのか」をみんなで議論することではないでしょうか。

次のオランダからの報告も楽しみにしています。
<取材・文責>ソーシャルライター 吉田 百助