エネルギーを自給する快適な家-北信商建株式会社

国は、「その家で使うエネルギーは、その家で作るゼロエネルギー住宅を推奨しています。2020年から建てる家の半分を、2030年にはすべての家が対象になります。冷暖房、換気、給湯、照明に必要なエネルギーがすべてまかなえるゼロエネルギーハウスを見学しながら、「ホクシンハウス」で知られる北信商建株式会社(長野市南長池)の代表取締役 会長(開発普及担当)相澤英晴さんにお話を伺いました。

お客様の悩みを解決する「魔法使い」と呼ばれる相澤会長 

家のランニングコストがわかる

北欧には、太陽熱を最大限に利用し、24時間全室の温度を18度に保ちながら、エネルギーが計算上ゼロになる超高断熱高気密な「無暖房住宅」がある。長野でも、壁の厚さを40センチメートルにすれば可能だとわかり、全国初の無暖房住宅ができた。

家の形と大きさで「その家の燃費」が表示できるグリーンシードハウス※は、家づくりに必要なコストと、その家で快適に暮らすための冷暖房にかかるランニングコストを表示している。

断熱性能を選ぶこともできる。太陽光発電で年間の冷暖房費と給湯費がまかなえる省エネ性能を追求したシリーズもある。まず家の性能を選び、間仕切りや内装を好みにあわせて選んでいく家づくりができる。

※かけがいのない地球環境をやさしく守る木々の緑のような家でありたいとの願いが込められている。SEEDは、すべての家に要求される大切なアイテムであるStrong強さ、Ecology環境性能、Economyコスト、Designデザインの頭文字を並べた。

太陽光の発電量と消費・売電が表示されたメーター

大切なのは居心地のよさ

家は住んでみないとわからない。デザインはいくらお洒落にしても徐々にさめてくる。快適な家は時を重ねてもさめることがない。むしろ愛着が増してくる。いい家はつくる前に考えるしかない。あるメーカーの調査で、家に住んでから「これをやっておけばよかった」と後悔するのが、①省エネ②断熱③結露対策という結果がある。

相澤さんには、引き渡し後のお客様から「結露で困る」と打ち明けられた苦い経験がある。つくった後では直せないと罪悪感にかられた。デザインも大切だが、やはり一番は快適さ。心地よさは五感で感じるもの。心地よくくつろげる場所は、家族の心と体も温める。

家具や家電製品など目に見える定価のついたものとは違って、目では見ることができない居心地。キッチンやシステムバスのような設備や外観などに金をかけるか、断熱性や気密など家の性能に金をかけるかで、居心地は大きく変わってくる。

家づくりにかける情熱

相澤さんは22歳で独立して40年を契機に、会長に就任した。仕事に対するモットーは「Going my way」。自分が最善と信じた道を進み、いい家をつくっていれば、自然に会社は大きくなると考えていた。儲けを考えるのではなく、いい家を考え続けて日本一の賞※をもらうまでになった。一所懸命に建てた家をお客様に喜んでいただけるのが、自分の喜びになっている。

※一般財団法人日本地域開発センター(主務官庁:国土交通省)が実施する省エネルギー住宅を選定する表彰制度「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー2018」で、特別優秀賞と特別優秀企業賞をダブル受賞。受賞は6期連続。また、HEAT20(2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会)より、平成30年度「施工実績特別優秀賞」を受賞。

お客様の中には、相澤さんと建てた家への愛着が増し、自分から「FBソーラー普及推進員」を名乗って人へ伝えたいという人がいる。会社ののぼり旗を自宅に立て、オープンハウスとして開放している人もいる。熱烈なファンが多い。

中央に飾られたアートは軽井沢に同社が家を建てた田嶋陽子さんの作品 

医・食・住 家と健康を科学する

家中どこでも均一な温度を保つFB工法(フレッシュ・ベーシック工法。断熱、気密、換気、暖房という4つの基本性能を、最小の機器とエネルギーで追求した工法)は、ヒートショックの危険を軽減する。冬の風呂場と脱衣所との極端な温度差は、体に大きな負担とストレスをかける。肩や腰、ひざの痛みや喘息の一因とも言われる。温度差は結露の原因にもなる。冬に多く見られる結露は、温度差のあるところにでき、カビの原因となって柱や床を腐らせてしまう。

壁や天井に断熱材を敷き詰めたとしても、隙間や間仕切り、床下の換気口から冷気が入り込み、どうしても温度差ができてしまう。家中を途切れない断熱で覆えないか。気密をよくすれば外気の影響を受けにくくなり、温度や湿度を思いどおりコントロールできる。結露しない家の研究から試行錯誤を繰り返し、より性能のよい家を追求してきた。現在の工法は、アメリカ留学から戻られたお客様から「地下室がありいつでもどこでも暖かい家が欲しい」との要望がきっかけで生まれた。現在は家の性能を担保するため、すべての建物の気密と換気流量を測定し、断熱性能などの計算書を提出している。

暑さ寒さをガマンするストレスがなく、家中温度差がない生活、素足で暮らせる快適さが健康寿命を延ばすと言われている。お客様の中には、75歳を過ぎた方や84歳の方もいる。80歳を過ぎて、家を建てたいと前向きさは、健康だからこそと感心させられる。

相澤さんは、「家はその家を建てた施主様より長生きする社会資産です。施主様の生涯の満足は勿論、後世に渡り受け継いで行ける家造りに心掛け社会貢献できる事を望んでいます。」と思いを語った。

実際にあった物語をマンガで伝えるシリーズ本

その人にあったステージで働ける職場

住宅展示場では、同社で家を建てた主婦が接客を担当し、実生活に基づいた暮らし心地を伝えている。主に話すのは、自分の家のこと。押しの強い営業ではなく、ただ率直に自分の体験をありのままに話すだけ。「自分が満足しているこの素晴らしい家を多くの人に知ってほしい」と熱がこもる。

こうした働き方のきっかけは、「子育てがひと段落し仕事をしたいが、時間的な制約があって都合に合う職場がない」との声だった。家庭の状況は皆ちがう。保育園卒園や小学校卒業など子育ての区切りを過ぎて、また社会へ出て働きたい人がいる。以前の会社をストレスで辞めた人がいる。人それぞれにあわせ、柔軟に働ける職場をつくる。みんなが健康で自立するためのステージを会社が用意した。職務形態や仕事内容、正社員かパートかアルバイトかなどを選び、その人にあった働ける仕組みができた。自分の健康さえ維持していれば、生涯現役で安心して働くことができる。

自動車を選ぶ時に燃費を気にするように、家のランニングコストを気にするエコハウスの時代がやってきた。健康維持にかかるメディカルコストも考えたトータルで、一生涯のライフサイクルコストを考え、なにを一番に選ぶのかが持続可能な社会に向けて大切になっている。

(文責:吉田百助)

ナガクルは国連が提唱する「持続可能な開発目標」SDGs(エスディージーズ)に賛同しています。この記事は下記のゴールにつながっています。