学校でも家でもない、ユース（10代の子どもたち、若者たち）の【第３の居場所】ユースセンターなどを運営する一般社団法人「オレンジファム」が、2025年8月7日（木）、千曲市で夏休み企画『みんなで海外の料理を作ろう』を開きました。
みんなでキンパを作ったよ
作ったのは韓国風海苔巻きの「キンパ」。集まった小中学生10名は、人参やきゅうり、卵焼き、たくわん、牛肉を彩りよくごはんの上へ並べていきます。並べる作業やラップで巻く作業は、手慣れた子どももいれば、少し難しそうにしながらも自分のペースで楽しむ子どももいました。
自分たちでつくったものを食べるのは格別のようで、完成したキンパを頬張る子どもたちの笑顔が印象的でした。
高校生ボランティアも餃子をつくり交流
この日は、長野県上田千曲高等学校食物栄養科3年の大日方凜々花さんと工藤里音さんがボランティアで参加し、中華料理の餃子200個を包みました。
ボランティア参加にあたって「子どもの食事を通じた居場所づくり」というテーマで課題研究に取り組む大日方さん。「自分が子どもの時にこういう場所があったら行きたかった。明るくのびのびとした雰囲気で、子どもの居場所として魅力的」と話しました。
一方工藤さんは、「子どもの野菜嫌いを解決する」というテーマで取り組みました。「思っていたより明るい雰囲気で、食事が楽しくなる工夫がされていた。フードロスを減らすために自分で盛り付けるなど、野菜嫌いの問題にも配慮していると感じた」と納得していたようです。
学校に行かない子にも栄養と安心を
オレンジファム副代表の飯島真紀子さんは、子どもの不登校に直面したことから、親同士が悩みを打ち明けて相談し合う「親の会 シャベリバ！」を開いてきました。自宅にも子どもの居場所を作っていましたが、オレンジファムの開設に伴い、活動拠点を移しました。
飯島さんは、「子どもが学校に行かないということは、給食の栄養や経費といった恩恵を受けられないということ。だからこそ、給食がないことで増える食費などの負担を少しでも軽くしたい」と考えています。
そうした思いから、オレンジファムでは平日の昼に週1回、こどもカフェを開き、食事の提供を続けています。
多様な価値観と出会う体験の場
オレンジファムの代表を務めるのは、中島壮太さんです。
生まれも育ちも千曲市の中島さんは大学卒業後、「まちづくりをしたい」「千曲市を盛り上げたい」との思いと、自らの体験から教育の大切さを実感したことをきっかけに、2023年5月にオレンジファムを開所しました。
「オレンジファム」という名前には、多様性と温かさを感じさせる「オレンジ」色のイメージと、どんな感情も受け入れられる、大人も子どもも家族のように集える温かな場所でありたいという願いを込めたそうです。
平日の昼間、子どもたちは教科学習のほか、ゲームや読書、創作活動、音楽活動、体験型の学びなどを自由に選びながら過ごします。また、地域の博物館やキャンプ場、文化財、動物園、公園などを活用した課外活動や、地域協力のもと行うモノづくりやキャンプ体験も行っています。
中島さんは、「ユースセンターは子どもを守るだけでなく、多様な価値観に触れ、さまざまな体験を通じて視野を広げる場だ」と考えています。自身も、多くの人やロールモデル（手本）となる大人との関わりを通じて価値観を広げてきた経験があるため、その大切さを強く実感しています。
また、認定NPO法人カタリバの「ユースセンター起業塾」で学んだ「斜め上の関係」を重視。教師のような上下関係でも、友人のような水平関係でもなく、お兄さん・お姉さんの立場から子どもに寄り添い、困ったときに気軽に相談できる関係を築くことを心がけています。
愛の循環を生む、教育を軸としたまちづくり
中島さんは、長野県が不登校児童生徒数で全国ワースト4位という厳しい現実や、千曲市内でも小中学生あわせて150人以上が学校に通えていないという事実に直面し、「自分ができることをしたい。この千曲市に、子どもたちが自分のペースで過ごせる場所をつくりたい」と思ったそうです。
オレンジファム開設後、中島さんは24年8月に千曲市雨宮で10代のためのユースセンター「ファボプレイス」を立ち上げました。さらに、25年4月には、通信制高校サポート校「千曲青橙高等学院」を開校し、若者支援の場を広げています。
中島さんは、「自分が千曲市で人から愛を受けて育ったから、いろいろな人にその幸せを届けたい。教育を軸としたまちづくりから長野県千曲市を盛り上げたい。千曲市で育った子どもたちが県外や市外に出てからも『また帰ってきたい』『地元に貢献したい』と愛の循環を起こしたい」と、想いを語りました。
取材・執筆／ ソーシャルライター 板本泰治（いたもとやすはる）
※オレンジファムの取り組みは、ホームページとインスタグラム参照。
オレンジファム（@orangefam）Instagram投稿より
