だれかと一緒に考える時間を楽しむために/山口泰聖

「楽しいってなに?」「遊ぶと学ぶはちがう?」「幸せとは?」と聞かれたらみなさんはどう答えますか?

ながの若者スクエア「ふらっと♭」では月1回、主に高校生~20代を対象に『哲学対話の日』を開催しています。ふと思う疑問について、対話を繰り返しながら考えを深めていく哲学対話の時間です。

哲学対話の様子

哲学対話とは何か?を説明しようとするとそれ自体が哲学となって厄介です。自分ひとりで考えて哲学するだけでは対話になりません。一方で、対話をしようと他者の意見をただ聴くだけでは哲学が深まらないこともあります。しかも、「何をもって哲学と言えるのか」「これは対話と呼べるのか」と考えると分からなくなることも多々あります。たとえ哲学をしても答えが出るわけではないですし、対話をしようと相手の意見に耳を傾けたとしても理解できず、同意もできないこともあります。

それでも、なぜ分からないだらけの哲学対話をするのか?それは、誰かが決めたゴールや正解ではなく、自分の考えたこと、思ったことをそのまま言葉にできる時間が大切だと考えるからです。

高校生も大学生も勉強では常に正解を求められ、受験や就職などある程度の決まったゴールに向かっていきます。しかし、もっと自由に自分自身で考えたいことはたくさんあるはずです。それは、例えば、ふだん言えない親や先生の愚痴のかもしれないし、部活やバイト先で感じるモヤモヤかもしれないし、好きな人や恋人の悩みかもしれないし、社会に対する問題提起かもしれないし、自分の夢なのかも…しれません。

日常で私たちが考えていること、悩んでいること、迷っていることに正解はなく、どんな結末になるのか分からないことばかりです。それは大人のみなさんも同じではないでしょうか。それにもかかわらず、「考える時間」があまりにも少ないです。特に、高校生や大学生は自由に何でも好きなことを考えて、誰かともっとたくさん話していいはずです。そこには、決められた答えもゴールもありません。だから、これからも『哲学対話の日』がそのための場になることを願って、続けていきたいです。

     執筆:ながの若者スクエア「ふらっと♭」 学生コミュニケーター 山口泰聖
     初出:長野市民新聞 NPOリレーコラム「空SORA」2025年2月掲載