「第12回ちいき活動みほん市」から見えてくる軽井沢町の地域活動

2024年6月16日(日)、軽井沢町中央公民館 で「第12回ちいき活動みほん市」(以下、みほん市)が開催されました。みほん市は軽井沢町と周辺地域の「ちいき活動」の発表の場であり、42団体が38のパネル展示等を行い合計291名が参加。

次の7団体に話を聞きました。(団体名をクリックすると記事に移動します)
・軽井沢ひまわり
・NPO法人 生物多様性研究所 あーすわーむ
・NPO法人 みんなとつくる軽井沢
・軽井沢図書館友の会
・ナカマノコエ
・まるっとみんなで映画祭2024
・メロディコマカロン

軽井沢ひまわり

「軽井沢ひまわり」のメンバー

「軽井沢ひまわり」は障がいの有無にかかわらず美味しいコーヒーを追求し、地域社会の交流の場を深め広めることを目的に活動しています。2023年3月に結成し同年9月の「チャレンジコーヒーバリスタ全国大会」を目指して活動、全国大会出場を果たしました。チャレンジコーヒーバリスタとは、障がいのある人を対象としたバリスタコンペティションです。

総勢18名のメンバーで活動しており、障がい者6名やその家族などで構成されています。普段は軽井沢町内にある保健福祉複合施設「木漏れ日の里」の売店・喫茶コーナー「ひまわり」でコーヒーを提供するほか、「かるいざわざわざわ」や「まるっとみんなで映画祭」などの町内イベントでもコーヒーを出しています。

2023年に出場した「チャレンジコーヒーバリスタ」の様子

活動をはじめたのは「チャレンジコーヒーバリスタに出ませんか?」と声をかけられたことがきっかけでした。他の団体はバリスタや焙煎工場で働くメンバーで構成されていましたが、軽井沢ひまわりのメンバーはコーヒーの淹れ方など基本的なことから学んでいけた上に、町内の有名なコーヒー店の店長がサポートしてくれたそうです。

「活動を通して、障がい者が一人で生きていけるようにしたい」と話すのは立ち上げ時から関わり、障がい者をサポートしている鈴木芳美さんと清原裕子(ひろこ)さん。「まずは軽井沢ひまわりの活動を知ってもらい、ぜひ木漏れ日の里にランチを食べに来てもらえればうれしいです」とメッセージを投げかけていました。

軽井沢ひまわりはみほん市の参加者に対して、のべ337杯のコーヒーを提供しました。なお、使用したコーヒーは、みほん市の実行委員長である小沼(おぬま)史弥さんが代表を務める「福祉ボランティア 珈琲ボランティア連絡協議会」が選んだ「ボーちゃんブレンド」です。パネル展示においても両団体は合同で出展しています。

売店・喫茶コーナー「ひまわり」の情報はこちらです。

NPO法人 生物多様性研究所 あーすわーむ

「NPO法人 生物多様性研究所 あーすわーむ」のみなさん

「NPO法人 生物多様性研究所 あーすわーむ」は、野生生物の調査や外来種の駆除などを行っている団体で、軽井沢町や長野県、そして環境省から受託している事業も行っています。法人化したのは2009年で活動の中心になっている8名を含め、全国に合計15名メンバーがいます。学んできた生態学を活かして活動する人や獣医として働きながら活動する方など、メンバーのバックグラウンドはさまざまです。

法人立ち上げのきっかけは「より本格的に、より専門的に」生物多様性の研究をしたかったからとのこと。団体名なっている「あーすわーむ」とはミミズのことで、たぬきやもぐら、そして鳥とさまざまな動物に食べられることから「この活動を通してミミズのように耕す存在になりたい」という意味が込められています。

活動内容と野生生物の頭蓋骨や毛皮の展示

「長野県全体では人口が減っているが、軽井沢町の人口は増えており建物も増えている」と話すのは、理事を務める福江佑子さん。「自然にはメリットもあればデメリットもあります。移住者の中には虫が多い、熊が出るなどのデメリットを知らないまま移住してくる方もいます。宣教師が別荘地として開発する前の軽井沢の自然と共存できるよう考えて実践してほしいです」と願いを込めて話していました。

「NPO法人 生物多様性研究所 あーすわーむ」のHPはこちらです。

また同法人は、特定非営利活動法人長野県NPOセンターといっしょにSAVE JAPANプロジェクトに取り組んでいます。6月1日には、「出動!生きもの探検隊 牧場に暮らす生きもの『巣まい』大調査!」を行いました。

NPO法人 みんなとつくる軽井沢

「NPO法人 みんなとつくる軽井沢」のみなさん

「NPO法人 みんなとつくる軽井沢」は交流やつながりの場をつくることを目的に、2023年10月に活動を開始しました。理事11名、協力会員3名の計14名で活動しており、メンバーのバックグラウンドは町議会議員、役場職員、教員、IT関係などさまざまです。また、もともと軽井沢町に住んでいた住民と移住者が一緒になって活動しているという特徴があります。

団体を立ち上げる前、メンバーは個々に活動しており人が足りずに困っていました。そこで、みんなで集まって活動することにより、人員を含め不足しているものを補い合おうという趣旨で団体を立ち上げました。そこから、現在のように人と人をつなぐ活動につながっていったのです。

2024年3月に実施した「軽井沢おもしろ活動展」や7月・8月に実施する「なんでも発表会」など

軽井沢町には、よくある地方特有の閉塞感を感じる場面がある一方、地価高騰のため若者が流出するといった軽井沢町ならではの問題もあるそうです。メンバーの押金洋仁さんは「活動に参加してくれる人を増やして、各々が自分で考えて地域を作れる状態を目指したいと思っています。行政に任せっぱなしにする、あるいは他力本願ではなく自分たちで町を作れるようにしたいですね」と話していました。

すでに他の団体に所属している方でも活動に参加できるとのことです。

「NPO法人 みんなとつくる軽井沢」のHPはこちらです。

軽井沢図書館友の会

「軽井沢図書館友の会」のみなさん

「軽井沢図書館友の会」は、本が好きな人が集まって図書館を応援している団体で、中軽井沢駅内にある町立の「中軽井沢図書館」で毎月行われる蔵書整理(本来と異なる書棚に格納されている書籍を正しい位置に入れ直す作業)に参加したり、夏季のみ開館する同じく町立の「離山図書館」においてイベント運営をしたりしています。総勢50人ほどで構成されており、50代〜70代の方が中心でリタイアされた方も多くいるとのことです。

活動内容や「2023年度 こどもの本貸出ベスト10」など

お気に入りの一冊を持ち寄って他の参加者に5分で内容を説明する「ビブリオバトル」や、古本を1冊100円で持ち帰ることのできる「古本まつり」を開催しているとのこと。ちなみに古本まつりの収益は福祉施設に寄付しているそうです。「図書館を交流の場にしたい。ぜひ図書館を使ってください」と話していました。

「軽井沢図書館友の会」のHPはこちらです。

ナカマノコエ

「ナカマノコエ」の津田尚子さん

「ナカマノコエ」は食品ロスをテーマに活動している団体で、今年は高校生やFM軽井沢と一緒に「生ゴミ資源の重点化」をテーマに活動しています。団体としての活動は2021年秋から行っています。

ナカマノコエの特徴はプロジェクトに応じて活動人数が変わること。通常時は2人で活動していますがプロジェクトごとに人を集め、一つのプロジェクトにつきおおよそ10人で活動しています。団体名は「考えていることを声に出した方がよい」というアドバイスに由来しており、「みんなで集まることの大切さ」という意味も込めて「ナカマノコエ」と名付けられたそうです。

コンポストの利用方法やメリットだけでなく、実物も展示

活動をはじめたきっかけは映画『食の安全を守る人々』を自主上映したいと考えたことでした。この映画のテーマは、食品のDNA配列を切断し、そのDNAの修復過程において機能の停止や強化を行う「ゲノム編集」であり、それに反対する活動家や学者が登場する作品でした。

「私たちの生活が、実は地球環境と密接に関係していることを地域の方に知ってもらいたい」と話すのは代表の津田尚子さん。「生ゴミを資源化して土に還らせるとゴミが減ることや、台所と地球環境がつながっていることを知ってほしいと思います。虫や臭いを恐れず、コンポスト生活にチャレンジすれば楽しくなります」と話していました。

「ナカマノコエ」のYouTubeチャンネルはこちらです。

まるっとみんなで映画祭2024

「まるっとみんなで映画祭2024」のみなさん

「まるっとみんなで映画祭2024」は、軽井沢町や周辺地域に住む方に参加してもらい、ユニバーサル映画祭を企画、運営している団体です。「ユニバーサル映画祭」とは誰でも気軽に参加できる映画祭のことで、年齢や国籍、障がいの有無にかかわらず多くの人が楽しめるように、字幕や手話などハード面のサポートと「上映中静かにしなくてもOK」という環境面のサポートがあります。

2022年、広く一般に「まるっとみんなで調査団」のメンバーを募集して企画立案をはじめました。そして、2023年に軽井沢町ではじめて「まるっとみんなで映画祭2023」を開催したのです。現在、調査団は14名おり、毎月会議を開催しているそうです。メンバーの年齢層は幅広く10代〜70代とのこと。住んでいる場所もさまざまであるため、オンラインも併用しながら会議を開催しています。

昨年開催した「まるっとみんなで映画祭2023」の様子や参加者の感想

軽井沢町には映画館がなく、仮にあったとしても静かに見ることのできない子どもや障がい者のある人、そしてその家族はなかなか映画館で映画を見ることができません。そういった人たちが気軽に映画祭に参加できるようにするほか、隣の住人を知らないということもあるため地域のネットワークをみんなで作っていきたいとのことです。

事務局の田澤瑞季さんは「今後も活動を継続して、毎年映画祭の時期になるとみんなで集まれる恒例行事にできればうれしいです。多くの地元住民が互いを知ることで、共生や多様性の観点でよいのはもちろん、防災の観点からもメリットがあります」と話していました。

映画祭への参加はもちろんのこと、映画際作りに参加できる方も募集しているとのこと。2023年の映画祭では「ドキュメント軽井沢」という映像作品を作って上映しました。

2023年に開催された「まるっとみんなで映画祭2023」のHPはこちらです。

メロディコマカロン

「メロディコマカロン」のみなさん

「メロディコマカロン」は将来の夢を持つ子どもたちに、プロやセミプロの音楽家との交流のきっかけを作ること、そして演奏会になかなか行けない地域の方に音楽を聴く機会を作ることを目的に活動しています。代表の川畑彩香さんは個人として20年ほど前から活動していますが、団体としての活動は2023年から始めたとのことです。

子どもと保護者合わせて20人で活動しており、メーカーに勤務している方や医療関係者、生花店に勤めているなど保護者のバックグラウンドはさまざまです。イタリア語で「メロディーの」という意味のメロディコと、色々な個性を大切にしたいという意味を込めたマカロンという言葉を合わせて団体名にしました。

活動のきっかけは0歳から入れるコンサートや障がい者も行けるコンサートがなかったこと。そのため、子育て中のママさん・パパさんや障がい者の家族、そして介護中の家族にも楽しんでもらいたいとのことです。

7月に開催する「0さいから入れる メロディコマカロンコンサート Vol.2」(入場無料)の告知など

川畑さんは「音楽や芸術に興味を持つ人が増え、笑顔で楽しく暮らせる人が増えればいいなと思います。家族みんなでコンサートに来てもらい、家に帰ってからの会話のきっかけにしてもらいたいです」と話していました。

また、メロディコマカロンは本イベントのラストプログラムとして、ミニ演奏会を開きました。この記事では演奏した楽曲の一つである「糸」をフルサイズ(4分弱)で公開しています。

メロディコマカロンが演奏する『糸』(中島みゆき)

メロディコマカロンの情報はこちらです。

取材を終えて

「第12回ちいき活動みほん市」実行委員

その土地のことを知るには、その土地の人と話すのが一番。それが今回の取材で感じたことでした。

軽井沢町に限らず、住んだことのない自治体、あるいは知り合いのいない自治体のことはなかなか分からないものでしょう。

本イベントは2023年に続いて2回目の取材でした。昨年掲載した団体については今回の取材を見送りましたが、昨年の取材以降の様子を聞くと目に見えて成果が出ていたり、新しいことを始めていたりと着実な進歩を感じました。

状況が許す限り来年以降も継続して取材できればと思っています。2年取材しても、まだ紹介できていない団体が多いのが実情です。

みほん市が、地域の方を中心に軽井沢町の現実を知る機会になることを願っています。

<取材・執筆>ソーシャルライター 廣石健悟