「ながの子どもを虐待から守る会」は1997年に発足し24年が経ちました。当初『子どもの虐待をなくしていこう!』との思いをもつ病院関係者、法律関係者、行政職員及び地域の子ども虐待に係る人たちが集まり、これまでさまざまな活動に取り組んできました。しかし、子ども虐待はなくなるどころか、増加の一途をたどっています。
マスコミなどで重篤(じゅうとく)な子ども虐待の報道がされるたびに、行政も民間も頑張っているのに「どうしてこのようなことになってしまうの!」と虐待を受けた子どもへの思いと関係者への怒りが沸き上がってきます。
私は、96年に児童相談所勤務になりました。その頃重篤な障がいを負った子どもの相談が次々と来ていました。虐待した親と面接し、保護した子どもに会いに病院や施設へ行き、対応に追われる毎日でした。
虐待している親は虐待を決して認めません。「言うことをきかないからしつけのためにやった」と主張し、子どもは親にひどい目に会いながらも、「家に帰りたい」と思っています。自分の無力を実感する日々でした。
そこで分かったことは、虐待する親の多くが自身の闇を抱えているということです。そして、相談に乗ったり、手助けをしてくれる親族や機関がなかったということでした。もちろん虐待した親は、自分のしたことに責任を負わなければなりませんが、その親を非難しても虐待はなくならないということです。そこで15年前、退職を機にこの会の事務局を引き受けることにしました。
民間団体には行政のように強い権力はありませんが、子どもを虐待しそうな親に寄り添って、話を聴いたり必要な関係機関につなげたりはできます。当会では育児不安のお母さんなどを対象に、電話相談「子育てひといきホットライン」、お母さんのグループカウンセリング「ほっとひといきママの会」を開いています。また、子ども虐待に関わる専門職への支援として、研修会なども実施しています。
このコロナ禍の中で、生活や子育てへの不安を抱えている親御さんが増えていると思われます。少しでも、地域の中で「大丈夫だよ! 一人で悩まなくてもいいんだよ!」と言うことが発信できたらと考えています。
文責:ながの子どもを虐待から守る会 事務局長 村瀬 和子(むらせ かずこ)
初出 : 長野市民新聞 NPOリレーコラム「空SORA」2021年8月21日掲載