何か市民活動を始めたいけれど、どうしたらいいか分からない。そうだ、さまざまな活動をしている「先輩」たちの話を聞いてみよう——。
2026年3月8日(日)、千曲市総合観光会館で市民活動を始めたい人が集うイベント「C-OPEN CAMPUS」が開かれました。
主催は「ちくままちづくり文化祭実行委員会」から名称変更した「C-together」、共催には千曲市が名を連ねました。また、千曲商工会議所や戸倉上山田商工会、一般社団法人 信州千曲観光局も協力し、官民一体となっての開催となりました。


C-OPEN CAMPUSに込められた想いと目的
C-OPEN CAMPUSは千曲市(一部、周辺自治体を含む)で活動する市民団体や企業がこれまでの成果を発表する場です。登壇者が所属する団体の形式はさまざまでNPO法人や一般社団法人、株式会社や経営者団体(ライオンズクラブ)まで多種多様な意見が一日で聞ける貴重なイベントでした。
イベントは七つの講演(セッション)で構成されています。
- 自分の活動を起こす一歩、先輩の話を聞こう!
- 千曲市の元気な企業の話を聞こう!
- 新しく始まった事業のエネルギーを感じよう!
- 『みんなの冷蔵庫ちくま』の事例を聞こう!
- 話題の信州サウナカルチャーに触れよう!
- 学びと子ども居場所づくり最前線を聞こう!
- 等身大から始めるマルシェ、ノウハウを話そう!
このうち、本記事ではナガクルの趣旨(市民活動)に近い1.および5.〜7.を紹介します。
なお、イベント名の「C」には五つの意味が込められています。
- Challenge:挑戦
- Create:共造
- Collaborate:協同
- Communicate:対話
- Cheer up:応援
イベント全体を通して、これらに沿った市民活動および企業活動が報告され、参加者との活発な意見交換が行われていました。
オープニングトーク——大切な活動の第一歩のために
オープニングトークでは先に活動を始めた3名の先輩が、自身の団体の活動内容や今後の課題を話しました。
NPO法人千曲ねこの会 平田里美さん

NPO法人千曲ねこの会は、千曲市内の飼い主のいない猫の繁殖抑制と生活環境改善を目的に、2018年に設立された団体です。正会員12名を中心に獣医師と連携して年間約200頭の不妊手術を実施しています。
猫の糞尿による住環境悪化の原因の一つが、生活困窮者や高齢者による餌付けだといいます。「猫が可愛そうだから」という理由で餌をやり続け、人間の住環境悪化につながっています。なかには「俺が勝手にやっていることだから」と話を聞いてもらえない場合もあるそうです。しかし、そんなときには家族や親戚の人に間に入ってもらうなど、円滑に進める方法を話していました。
代表の平田さんは「メンバーの平均年齢が約50歳でライフステージが近く、子育てが終わったら親の介護が始まる。活動を縮小するのか、ライフステージの異なるメンバーを迎えて継続するのか検討が必要です」と、今後の課題を話していました。
NPO法人千曲ねこの会の詳細はこちらから。
ここはなパズル 西野智子さん

「ここはなパズル」は核家族化が進む中で孤独な子育てを解決する親子(ママ)の居場所づくりを目的に、2025年9月に設立されました。代表の西野さんは、結婚を機に千曲市へ転入後、知人もなくコロナ禍で孤独な育児を経験しました。小さな子どもが遊べる屋内施設がないことから、「ないなら自分で作る」と決意して子育て中のママ5名で立ち上げたのが、ここはなパズルです。
現在は月2回、子どもの見守り付きワークショップやランチ会を開催しています。今後は設立当初からの目標である屋内遊び場の設立や、一般社団法人化を目指す予定です。また、将来的には「赤ちゃんからシニアまでが交流できる複合施設の運営を実現したい」と話していました。
西野さんは自身の経験を振り返り「実現できるかどうかは別として、まずやりたいことを口にすることが大切だと思います。声に出し続けることで周りの人がご縁をつないでくれて、気づけばそれが私にとってのレールになっていました」と話していました。
ここはなパズルの詳細はこちらから。
認定NPO法人エリアネット 田中一樹さん

認定NPO法人エリアネットは、千曲市屋代にある市民交流センター「てとて」を運営する中間支援団体です。市民団体と行政の間をつなぐのが役目で、後方支援やネットワーク構築などを通じて市民団体の活動を後押ししています。
2026年5月からは新講座「まちまち未来塾」の開講を予定しています。全6回の連続講座で、様々なジャンルの実践者を講師に招き、活動へのヒントや仲間との出会いを提供します。参加費は一般5,000円、中学生以上の学生は無料で開催は土曜日の午前です。
職員の田中さんは「やってみたいけれど、まだ形にできない。そんなモヤモヤしている方にぜひ受けていただき、一歩踏み出すきっかけを作っていただければ」と参加者の背中を押していました。
認定NPO法人エリアネットの詳細はこちらから。
好きな人も苦手な人も一緒に楽しめちゃう!信州サウナカルチャー

千曲市らしい事例の一つとして紹介されたのが、「信州サウナ同盟」の活動です。信州サウナ同盟は自治体職員や民間企業の会社員など、長野県内の「サウナ好き」が集まった団体です。
今回の講演ではメンバーの山崎哲也さんがファシリテーターを担い、同じくメンバーの勝又健彦さんと藤森雅史さんが活動内容やサウナの魅力について語りました。
教科書通りでなくても構わないサウナの楽しみ方

サウナ好きと聞くと「根っからの」という接頭語が付きそうなイメージですが、勝又さんは「教科書的なサウナの入り方が苦手」だと言います。「12分間サウナに入り、2分間水風呂に入り、その後に外気浴をする」という入り方の指標があるとのこと。しかし、勝又さんは水風呂が苦手で、あまり温度の低い水風呂には入らなかったり、冬に無理して水風呂に入ることもないそうです。
一方で、藤森さんは「教科書的な入り方」の洗礼によってサウナの良さに気付いたそうです。「サウナに入った後、嫌なことを忘れたんです。そして、ご飯が美味しく感じ、よく眠れました。これだけで良いことがあり、それが『ととのう』なんです」と、人それぞれが感じるサウナの良さについて話しました。
長野県内での活動状況と規制緩和に向けた提言

同団体は千曲川の河原や、千曲市・上田市の市民プールなど県内各地でサウナイベントを実施してきました。このように聞くとどこでもサウナができそうですが、実は屋外サウナは公衆浴場法などの規制により、従来の条例では開催できませんでした。
阿部長野県知事に「サウナを通じて長野の自然の魅力を発信し、他県から人を呼び込める」と長野県の規制緩和を訴えた結果、長野県が日本で初めて関連する規制を緩和したとのことでした。その結果、長野県において屋外サウナが法律の範囲内で柔軟に実施できるようになったのです。これも信州サウナ同盟の活動の成果です。
※当時のニュース映像
企業やフリースクール、被災地などで広がるサウナの活用
信州サウナ同盟は、ただサウナを楽しむだけでなく、地域コミュニティの形成にも活用しています。例えば企業の駐車場にテントサウナを持ち込んでの社内交流や、千曲市内のフリースクール「オレンジファム」(同イベントでも登壇)での中学生とのサウナ体験会があります。また、令和6年能登半島地震の避難所へ100台規模のテントサウナを提供し、採暖室として利用してもらうなど、活動の幅は広がっています。
勝又さんは「我々は利益を追求しすぎない。サウナを通して地元が盛り上がったらまずはそれでいい。もし利益が残るならそれは最後でいいんです」と、団体の姿勢を語りました。
信州サウナ同盟の詳細はこちらから。
「長野県民らしくなさ」がユースの自立後押しの秘訣
信州サウナ同盟でも登場した「一般社団法人オレンジファム」の講演もありました。登壇者は代表の中島壮太さん、副代表の飯島真紀子さん、そしてイベントスタッフの小松太陽さんです。中島さんのファシリテーションで講演は進みました。
オレンジファムの活動紹介

一般社団法人オレンジファムは、「全ての子どもたちが明るい未来を感じられるように」をビジョンに掲げ、2023年5月に設立されました。フリースクール、ユースセンター、まちづくりイベントなどを通じて、居場所づくり事業と街づくり事業の二本柱で活動しています。ユースセンターとは学校でも家でもない「第3の居場所」です。中高生がユースワーカーと呼ばれる若手スタッフと「斜め上」の関係で触れ合うことで、人との関わり方を学ぶ場です。
中島さんによると、長野県は若者の自死率が非常に高く、不登校数も同様の傾向にあるとのこと。その背景について、中島さんは「いい大学に入っていい就職先を見つけるなど、『こうやって生きるのが正しい』という古い価値観が、情報にあふれた今の子どもたちの感覚と大きくずれてしまっている。そのずれが子どもたちの苦しさを生んでいる」と分析します。
これまでの活動を振り返るトークセッション

トークセッションでは飯島さんと小松さんが、子どもたちとの関わりについて語りました。
飯島さんは、3人の子どものうち2人が不登校を経験しています。「私が子どもの頃とは全く感覚が違うんです。昭和の価値観で『普通はこうじゃないの?』とか『こうするべきなんじゃないの?』と言ったら、息子にすごく怒られました」と話し、子どもたちとの価値観の違いを実感していると語りました。
小松さんが中高生と接して印象に残っているのはキャンプ中のエピソードだそうです。インターネットで見るような“強い言葉”を普段から口にしていた不登校の子どもに、食事前にいただきますの号令をお願いしました。すると、「ご飯を作ってくれた人に感謝していただきましょう」という言葉が返ってきたといいます。小松さんは「作ってくれた人のことを考えてその言葉が出たんだと思います。すごく嬉しかったです」と振り返りました。
千曲青橙高等学院の開校と、オレンジファムが目指す社会

2025年4月にオレンジファムは、通信制高校のサポート校「千曲青橙高等学院」を開校しました。年齢を問わず入学できるこの学校は「再挑戦の場」となっています。経済的な理由や距離の問題で長野市・上田市の通信制高校に通えなかった若者や、病気などで進学を一度諦めた人が高卒資格の取得に再挑戦できる場です。
オレンジファムが目指すのは、「素敵な出会いと体験活動にあふれた千曲市」です。地域の大人・企業・団体と子どもたちをつなぐハブとなり、一人ひとりの才能が生かされる社会を描いています。「その原動力となる中島さん自身の広い価値観はどのように培われたのか?」という会場からの質問に、「自分とは異なる価値観をもついろんな人の考え方を聞き続けた結果、今の自分がある。自分にない考えを持っている人と出会うことが最高に楽しいです」と中島さんは答えました。
オレンジファムの詳細はこちらから。
ゼロからマルシェを主催するには?
最後の講演はマルシェ開催の実績が豊富な三名が登壇しました。ミリグラム株式会社の代表および株式会社parcの共同代表である間藤まりのさん、合同会社アメのちハレの代表である金田琢也さん、そして株式会社ふろしきやの代表である田村英彦さんです。
この講演は複数のトピックの中から聴講者のリクエストによって話題を決めるというスタイルです。田村さんが選ばれたトピックについて説明し、それに対して間藤さんと金田さんが経験や考えを話す形で進められました。
まずは小さく、具体的に詰める。等身大のマルシェの始め方

はじめてマルシェやイベントを企画する時には「何から手をつければいいかわからない」という壁にぶつかりがちです。田村さんは「まず小さく始めることが重要。そして、キラーワードや一言で説明できるコンセプトを考え、1〜3枚の提案書(ペライチ)にまとめること」と強調しました。
間藤さんも最初のイベントでは、近くの神社に提案書を持参して相談したといいます。場所については「すでに人が集まり慣れている神社や公民館、お寺などの公共施設が寛容に貸してもらいやすい。電源・トイレ・駐車場などの会場スペックも事前に確認しておくことが重要です」と話していました。
必要金額を定量的に捉える。情報発信など抑えられるコストもある

資金面では、漠然と不安を抱える前に、かかる費用を項目ごとに洗い出すことが先決です。広報・PRについては、無料のWebメディアへの掲載、インスタグラマーとの協力、出店者のSNSを活用した告知など、お金をかけずにできる手段が豊富にあります。
地方では未だに紙媒体の宣伝効果が大きく、コンビニやスーパー、保育園へのチラシ持ち込みも活用するほうがよいという一面も。登壇者たちは「意外と受け入れてもらえた」と、口を揃えて話していました。
そこで問題になるのが負担です。例えばチラシを印刷するにも費用がかかるため、費用の捻出方法を決めておかないと、揉め事の原因になると金田さんは指摘します。
出店料について間藤さんは「出店者からお金(出店料)をもらわずにやったイベントはありません。払ってもらうことで、出店者さんに仲間になってもらうという感覚なんです。出店者さんとの間に線を引きすぎず、一緒に作り上げていくという意識です」と、出店料に対する信念を話していました。
仲間の数はイベント規模に応じて。地域とのつながりが続けるコツ

仲間づくりでは、まず1人目の共感者を見つけることが最重要です。一方で、仲間を増やしすぎると意思決定のスピードと精度が落ちることも。間藤さんは「小さいイベントなら、自分たちのやりたいことを大切にできて意思決定が速い3人程度のコアメンバーで動くことが大切」と説明しました。
地域との関係については、金田さんがこう振り返ります。「最初は、地域の年配の方々を相手にする必要はないと正直思っていました、反対されるし。でも、コミュニケーションを取っていくと、ものすごく力強い味方になってくれることもあるんです。イベントを続けるなら、まずはきちんと話し合うことが大事だと感じています」。叱られることを恐れずに一歩踏み出す姿勢が、長く続けられるイベントの土台になっていくといいます。
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parcの詳細はこちらから。
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取材を終えて
各講演の登壇者から活動や事業に対する想いが十分に伝わってきて、非常にエネルギッシュなイベントだと感じました。
しかし、活動を継続するにはお金、人材、ネットワークなど現実的な問題が降りかかってきます。千曲市に限らず、それらをクリアできずに断念する人は少なくないのかもしれません。
今回のイベントではそれらを乗り越えた、あるいは今まさに乗り越えようとしている人が多く登壇していました。これから活動を始めようと思っている当事者の目には、その姿がとても頼もしく映ったでしょう。
お金、人材、ネットワークの中で最も大切だと個人的に思うのは人材です。お金がなくなったらまた作れば(稼げば)いい、ネットワークがなくなったらまた築けばいい。しかし、活動の意思を受け継ぐ人材がゼロになってしまうと、再び継続の火を灯すのは容易ではありません。
もしかすると、C-OPEN CAMPUSは千曲市内で活動を継続する人材を育てるイベントなのかもしれません。次回以降の開催も期待しています。







