「どうして寄付をしたの?」私は、非営利組織の資金調達を支援するファンドレイザーとして、いろいろな方に「寄付体験」を尋ねます。「ひとり親としてその気持ちがわかるから」「何か自分にできることをしたいから」など理由は人それぞれです。
ある時、環境保全活動や難民支援、若者の居場所づくりなどに募金した体験を持つある小学生が「どれも気になるんだよ。だってどれも私と関係あるから」と話してくれました。その子は、どの社会課題も自分とつながっていると感じていたのでしょう。
地球温暖化も紛争も貧困問題も、自分自身と関わりがあると思っています。自分が使うパソコンや食べ物を含めた生活の裏側にはいろいろなストーリーがあり、誰かの犠牲もあるかもしれません。だとしたら、知らんぷりでいいのかな?自分にできることは何だろう?その一つが「寄付」なのだと思います。直接自分が何か大きな行動を起こすのは難しいし、あれもこれもはできない。でも、物やお金、自分のちょっとした労働力を「寄付」することならできるかもしれませんよね。

寄付は社会参加の入口であり、こうなってほしいという「未来への意思表示」です。一つひとつは小さくとも、重なることで大きなムーブメントとなって社会を動かします。しくみや事業という形になっていくこともあります。寄付にはそんな力があるのだと思います。
国内の個人寄付は10年前から約2.5倍と大きく伸びています。ふるさと納税の影響を除いても、度重なる災害やクラウドファンディングなど、日本人の寄付意識は確実に変化しているように感じます。2023年の独立行政法人国立科学博物館による9億円超のクラウドファンディングで博物館の裏にある厳しい現実を初めて知り、支援した方も多いのではないでしょうか。非営利組織は、寄付集めの活動を通じて社会の課題や理想の未来に近づくための一歩を世に提示し、ともに挑む仲間づくりが可能になります。
12月は、寄付について考え行動しようと設けられた「寄付月間」です。忙しかった1年の終わりに、ちょっと先の未来のことを考えた「寄付」をしてみませんか?
執筆:認定ファンドレイザーⓇ/長野県NPOセンター 戸井田由奈
初出:長野市民新聞 NPOリレーコラム「空SORA」2024年12月掲載