信州新町信級地区は、信州ふるさと120山 長者山(標高1160m)の麓に広がる限界集落です。過疎化や高齢化で周りの里山が荒れ放題となっている中、森林整備に志のある仲間が集まり、令和2年に「信級きぼうの森」を立ち上げました。100年後まで子どもたちが親しめる森を創っていくことを目標としています。
間伐や景観整備をしながら山のことを学ぶのも楽しいのですが、都会の人にもっと山を訪れてもらおうと森林体験交流会をはじめ、ツリークライミングやクラフトワークなど森林環境を学ぶワークショップを定期的に開催しています。

子どもたちは山の中で遊び始めると時間を忘れてしまいます。「この葉っぱはどの木のだろう?」「このきのこ食べられる?」「この木に登りたい!」。子どもたちの好奇心は無限で、五感を通じて森から多くのことを学んでくれます。生き生きした子どもの笑顔に親も「森林の中での体験がこんなすばらしいとは思わなかった。親子で貴重な体験ができて嬉しい」と満足し、それが我々の活動の励みになっています。
また、山に安全に立ち入るには道の整備も大切です。長者山山頂への登山道もここ20年整備されず、荒れ放題でした。倒木を撤去したり、危険個所にロープを設置したりする作業を定期的に行うとともに、長者山山麓を通る旧大町街道や集落間の古道を再生させる活動も楽しみながら行っています。
今後注力していきたいのは、昭和の良き時代のように森の恩恵を活かし、共に暮らしていく生業を増やすことです。それは、地域材の製品化をはじめ、薪、炭の製造、キノコ・山菜採りと無限にあります。今年は山の中に立ち枯れている栗の木を製材して登山道の看板に有効活用しました。薪づくりも本格的にスタートします。
身近な里山を訪れてもらうことで「森の中で過ごすことが最高の贅沢」と思える人をどんどん増やせれば素敵です。そして、この取り組みが里山の水源を守り、土砂災害を防ぎ、ひいては地球温暖化防止に繋がることを信じて、これからも活動していきたいと思います。
執筆:信級きぼうの森 事務局長 関口喜人
初出:長野市民新聞 NPOリレーコラム「空SORA」2024年11月掲載