25年前、私たちの生活は1頭のラブラドールレトリバーによって一変しました。その犬はまさに「怪獣」。翻弄される毎日でしたが、小さな犬に心奪われていきました。
愛犬との生活は楽しさに溢れていましたが、その一方で、人間のエゴに苦しむ犬猫がいることを知りました。「犬を家族に迎えたことで幸せを感じられる場があれば、飼育放棄を防げるのではないか」。そう考えたことが「パドックNAGANO」のはじまりです。設立から10年、のべ4000組が活動に参加し、愛犬との関係を深め、犬が紡いでくれた人と人との繋がりを楽しんできました。設立当初に描いていた形に少し近づいたような気がします。
ところが、意外にも愛犬と一緒に街中を散歩したり、旅行や自然の中で遊んだりする経験が少ないという声を聞きました。地域社会に目を向ければ、長野市には犬連れ散歩が禁止されている公園があったり、犬を連れて入れるお店や宿泊施設が少なかったりする現状があります。犬との暮らしに幸せを感じてはいるが、犬と一緒にさまざまな体験をすることにためらいがあるのは残念な気がします。それは、環境的な要因もありますが、飼い主のマナーやしつけへの意識の低さ、体験の機会が乏しいことも大きな要因です。どうすればもっと愛犬との暮らしを楽しく豊かなものにできるだろうか。これが私たちの第2フェーズの課題です。

そこで、今後はマナー向上と、犬と楽しむさまざまな体験を柱とする「犬と歩けば。。プロジェクト」を展開していきます。犬との暮らしには「歩くこと」がつきものです。「犬と歩くこと」は、健康、人々との交流、子どもや高齢者の見守りにつながります。何かに挑戦したり発見があったり、行った先で食べたり飲んだり遊んだりと、「犬と歩くこと」で生まれる効果は、愛犬家が得られる恩恵を超えて、地域づくりや地域活性化にも波及します。
「犬がいる幸せ」から「犬と行動する幸せ」へ。そして「犬」をキャッチワードとして長野を盛り上げたい!人と犬が共存し、笑顔あふれる地域社会を創り出す手助けになればと願っています。

執筆:NPO法人家庭犬育成協会パドックNAGANO 理事 長谷川 孝子
初出:長野市民新聞 NPOリレーコラム「空SORA」2024年10月掲載