令和元年の台風19号災害からまもなく5年。復興への道のりはまだ続いています。
一般社団法人しなの長沼・お屋敷保存会が修復再建をめざす200年前の古民家「米澤邸」(1818年・文政元年創建 長沼地区)は、この春からようやく修復の手が入り始めました。「左官塾2024」の会場として、左官技術を学ぶ本格的なワークショップを行い、流れ落ちた土壁がもとの姿に戻りつつあります。
全国的に著名な左官職人・小沼充親方を講師に招き、応援の職人たち5名が全国から集結。塾の参加者約20名も県外からの人が多く、伝統構法の技を実践的に学ぶ場となっています。6月は基礎となる小舞かき、7月はコテ板づくりと荒壁塗り、8月は中塗り、9月は仕上げというスケジュールで、日程は各月2~3日間です。

保存会は修復費用捻出のための助金獲得をめざしましたがうまくいかず、昨年の秋にはクラウドファンディングを実施しましたが、これも目標に達することができませんでした。そんなとき、空間美術家の木村謙一氏が左官塾開催を提案し、講師陣となる職人を集めてくれました。これまでの保存会活動のなかで木村氏および小沼親方との関係が深くなっていたことから実現できたのです。
長沼地区には伝統構法の古民家がたくさんありました。土壁で水害に強く地震の揺れにも耐える構法は、戦後も継承されていました。しかし、台風による水害で多くの古民家が公費解体によって姿を消し、長沼の風景は大きく変わりました。「米澤邸」は幾たびもの水害や地震に耐え抜き、200年以上を経た今も威風堂々とした姿を見せています。この建物を修復し後世に残すことは、今を生きる者の使命ではないかと保存会のメンバーは気持ちを引き締め、協力する賛同者も広がっています。
ここを拠点にイベントを実施し、民間の力を合わせた「行動」で修復を進めていく。その取り組みによって伝統構法の良さを伝え、災害と防災を学ぶ場にすることを目指しています。
次回は8月24、25日(土・日)です。どなたも参加が可能。申し込みは保存会のホームページをご覧ください。

執筆:一般社団法人しなの長沼・お屋敷保存会 事務局長
初出:長野市民新聞 NPOリレーコラム「空SORA」2024年8月掲載