障がいのある子たちが、養護学校を卒業したら、どんな道があるのでしょうか? 専門学校や大学へ進学するとか、就労して自立するとか・・・。成長が少し遅かったり障がいが重度だったりで、すぐに就労することが困難だったらどうでしょうか。
もっと学びたい!と思った時、選択肢がもっとあったら、そして地域の人や障がいのない人もごちゃ混ぜで利用できれば・・・。

長野で初開催!「ともに学び、生きる共生社会コンファレンス」
そんな現状を踏まえ、「就労支援が難しい人の居場所。文科省の教育分野で学びの場や居場所を作ろう」という動きが全国でスタートしています。そのきっかけとして、ここ数年文部科学省が推進し、「ともに学び、生きる共生社会コンファレンス 東海ブロック」を名古屋市内で開催してきました。
今回、長野県で初めてこのコンファレンスを2月21日・22日の二日間、長野市のJA長野県ビル アクティーホールで開催します。>>>お申し込み・詳しくはこちらから
主催の長野県社会福祉協議会まちづくりボランティアセンター所長の長峰夏樹さんは、「障がいがある人やその家族、支援者、教育関係者、ボランティアはもちろん、体験コーナーもたくさんあるので、関心ある人なら誰でも気軽にご家族で遊びに来ていただければ嬉しい」と話します。
1日目は、書道家の金澤翔子さんのパフォーマンスや、書道教室を通じたカフェを運営する母親、金澤泰子さんのストーリーを聞く全体会と、全国の活動者が集まる4つの分科会があります。
2日目は2つの分科会や、eボッチャ、音楽・アート、太鼓、合唱などのパフォーマンスがあります。両日を通して、展示や体験コーナーが満載! 振る舞いの甘酒などもあり、親子で気軽に遊びに行きつつ、障がいのある人たちとの触れ合いや、学びを体験できます。


全体会には手話通訳がつきます。申し込みフォームで配慮が必要な場合は相談を。
高等教育機関への進学率は2.1%、知的障害者に限るとわずか0.5%
文部科学省は、特別支援学校高等部の卒業生の9割は、就職(約29%)または障害福祉サービス(63%)に進み、高等教育機関への進学率は2.1%、知的障害者に限るとわずか0.5%(H28学校基本調査)と発表しています。一方で、日本全体では、短期大学、専門学校等を含めた高等教育機関全体への初回進学率は、約74%もあるのです。
主催団体の担当者で立案者の福澤信輔さんは、「障がいのある子どもたちは、選択肢のない中で、いきなり社会に出なきゃならないのが現状です。卒業間近のある親御さんが『この子に、タバコ吸わせたい』とつぶやいたのです。卒業後にその子は、仲間がいるわけでもなく、行き場もなく、家と福祉サービスの往復で、成人してもなんの楽しみもない・・・そんな人生を送らせたくない。親心から来る必死の抵抗であり、留年させてでも学びの場にいさせたい、との親御さんの想いを聞いて、教育行政として、公民館など身近で学びのできる場に居場所を作っていかなければならないと考えたのです。今回のコンファレンスで少しでもたくさんの人に知って動くきっかけになれば」と熱く語ります。
その一方で、実は福祉関係の団体は、音楽を使った療法を取り入れてコンサートを開いたり、障害者スポーツやアート活動、余暇活動を推進するなど、自分たちがやっていることの延長線上にこの事業が当てはまるのではないかと福澤さんは言います。そういう意味でも、ぜひ多くの団体に参加してほしいとのこと。情報交換をしたり連携することで、この事業の広がりを期待しています。
下のマップにあるように、令和6年度、全国で37団体が取り組んでいます。今回のコンファレンスでは、長野県内の2団体はもちろん、全国の事例発表が1日目の分科会として行われます。

全国で37団体、長野県内で2団体の事例
「教育サイドだけではなく福祉や、地域など県内に大きな輪を広げていきたい」と福澤さん。長野県内では、令和5年からLomi Lomiどっとこむと長野大学が、文科省の「学校卒業後における障害者の学びの支援推進事業」 を行っています。
NPO法人 Lomi Lomiどっとこむは、大人の学校として、音楽演劇、アートなどを取り入れています(福祉だより信州823号)。上田市の長野大学では、知的障害のある学生を積極的に受け入れ共に学ぶプログラムを用意しています。

最後に、このイベントの目的について聞くと、「一般の人たちに混ざり合い、理解につながる社会が一番だと思う」と福澤さん。これまで、関心の少なかった一般市民にとっても、一緒に同じ空間を使って、楽しむ事が大切だと言います。「このイベントを通して、多くの人が互いに認め合える社会になればいい」と結びました。
実は、SDGsの教育での浸透もあり、福祉教育や人権教育は今、小中学校や高校で盛んに取り入れられています。むしろ、我々大人が、子どもたちの理解から遅れをとっているのかもしれません。「関心のあるお子さんといっしよに来ていただき、共に体験し、大人の価値観が少しでも変われば嬉しい」と、福澤さんは熱心に訴えています。>>>お申し込み・詳しくはこちらから
取材・執筆/ ナガクル編集デスク 寺澤順子



