発想の転換!? 「てっかりんご飛ばし大会」に歓喜! 長沼で災害復興のまちづくり

りんごの産地・長野市長沼地区で、摘果(てっか)したりんごをどれだけ遠くへ飛ばせるかを競うユニークなイベントが2024年7月6日、5年前に決壊した千曲川堤防で行なわれました。台風19号災害からの復興を願って開催したもので、昨年に続いて2回目。未就学の小さな子どもたちから高齢者まで世代を超えて約100人が参加。ときには笑い声、ときには歓声が湧き起こって、一帯は明るい雰囲気に包まれました。

世代を超えて楽しく交流した大会
会場は決壊した千曲川の堤防

意外に難しい「てっかりんご飛ばし」

「てっかりんご飛ばし大会」を主催したのは、長沼地区住民自治協議会のまちづくり委員会です。企画と運営は若い世代が担いました。会場は5年前、70メートルに渡って決壊し、現在は修復復旧している千曲川の堤防上です。

飛ばすのは、りんごの樹から間引きした小さな果実「摘果りんご」。りんご栽培では管理方法の1つとして、着果した果実の一部を取り除き、残した果実の大玉化や高品質化を図ります。

摘果りんごを50㎝~1mの枝先につけて振り投げ、思い切り飛ばします。
舗装された道路上に着地したものをセーフとして距離を測定します。道路両サイドの草むらに落ちたものはアウトです。

枝へのりんごの装着状態や枝の振り方にコツがいり、意外に飛ばすのは難しく、なかには真横に飛んだり、目の先に落ちてしまったり、はたまた後方に行ってしまうこともあり、そのたびに応援の観客席から爆笑が起きます。一人が3回投げて記録とします。

摘果したりんご
枝の先にりんごを付ける
様子を実況解説

最高記録は73mを超す

小学校高学年の代表が選手宣誓をし、住民自治協議会会長の松原秀司さんが始球式に臨んで競技が開始しました。

未就学児の部、小学校低学年の部、小学校高学年の部、中学生以上(大人)の部に分かれて競い、部門別に上位者を表彰しました。

大人の部では、最高記録73.6mが出ました。上位5名が決勝戦に臨み、優勝は72.8mを出した地区外(山ノ内町)から参加の太田嶺さんが獲得。優勝杯を手にしました。

小学校高学年による選手宣誓
思い思いのスタイルで投げる ①
思い思いのスタイルで投げる ②
思い思いのスタイルで投げる ③
思い思いのスタイルで投げる ④
優勝した太田さん

長沼地区特有のイベントに発展させたい

「てっかりんご」は通常、農園に落としたままにしていますが、ある年代の人たちは学校の行き帰りに投げ合って遊び、大人によく怒られたものだと言います。

そんな思い出から発想を得て競技化したもので、りんごの産地ならではのイベントとして発展させたいと実行委員は話しています。開催に先立ち、主催者から「摘果りんごで遊ばないように」との子どもたちへの注意喚起がありました。

今回から、地区外からの参加を可能とし、長沼を理解してもらうことを意図しました。長沼のよさを知って移住してくれる人が出てくればとの望みもあります。また、大人たちの真剣な様子を子どもたちが見て長沼を好きになり、将来地区外に出ても再び故郷に戻って来てもらえるようにすることもねらいです。

大会の様子は「ふくりん日記」のチャンネルで紹介されています。

ふくりん日記」のチャンネル

まちづくり委員会の委員長で大会の実行委員長を務めた関博之さんは「地域の人たちが交流するとともに、子どもたちには真剣な大人の姿を見て欲しかった」と話しています。

大会を振り返る関博之実行委員長

取材執筆 太田秋夫(ソーシャルライター 防災士)