#「潜在保育士」の発掘と職場復帰が求められる

「潜在保育士」の発掘と職場復帰が求められる

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取材・撮影・執筆・編集/ ナガクル編集デスク 寺澤順子
 2022.3.31
2021年11月23日、安曇野市で県(委託先:県社協)が開催した潜在保育士むけセミナーと就職相談会の様子

保育士資格を持っていても働いていない人を発掘!!

今、潜在保育士の発掘と、職場復帰が求められています。

「保育士として、もう一度働きたいけど自信がない」「我が子と一緒にいたい。でもお金も欲しいから働こうか迷う」「保育の現場から離れて久しい。復帰できるか不安」「今の保育現場がわからないため、働く自信がない、相談したい」「保育士の免許をとって短時間だけでも役に立ちたい」・・・・

これらは、潜在保育士向けの就職セミナーでの、相談会出席者のコメントです。「潜在保育士」とは、保育士の資格は持っていても、資格を生かして働いていない保育士のことです。結婚で移住したり、子どもができたり、病気や介護などで離職せざるを得なかった人たち。または、保育士の資格を持ちながら就職先が見つからず別の職についてきた、または子育てが一段落した人たちのことです。世代は20代から60代まで様々です。

セミナーと相談会は2021年度に安曇野市と長野市で開催されました。主催したのは長野県(委託先:長野県社会福祉協議会)で、保育士資格を持つ専門員が中心となって開催。行政の保育課だけでなく、NPO法人や民間の保育施設も参加し、園関係者二人のセミナー後に、それぞれの施設がブースを持ってステージ発表をし相談も受けました。参加者は両会場に各20〜30人程度が集まりました。

セミナーでは、「信州型やま保育」をはじめとする、子どもの自主性を引き出す保育の紹介や、保育士の給与のベースアップ、そしてパートタイムなど多様な働き方について説明がありました。

潜在保育士を保育現場に登用するための仕組みづくり

厚生労働省2018年統計によると、保育士資格登録者数は159万人で、そのうち従事者は54万人です。3分の2が、保育士の資格を持っていても、それを活かし働いていないのが現状です。一方で需要は大きく、特に都市部では、待機児童が課題となり、保育の受け皿を拡充しようと、公費を投入してきました。

長野県では、「子育て安心プラン」を受け、特に子育てをしながら労働人口を増やし、県の経済を支えるために、保育施設や一時預かりなどの充実、保育士の研修強化、魅力ある保育「信州型やま保育」の推進、潜在的な保育士確保などに力を入れてきました。

長野県令和4年度当初予算案

しかし、保育施設を充実させ、主に女性の働く機会をサポートすればするほど、未満児や、障がいのある子どもも含め、保育施設で働いてくれる保育士の確保が課題となってきます。保育士の多くは女性であるため、早朝や夕方以降の延長保育、休日保育などに勤務ができる、多様な人材が求められます。短時間でシフトを組んだり、短時間契約での幅広い年齢層の保育士が必要となります。

そのため、冒頭で示したように、保育士の資格を持っていても保育士として働いていないいわゆる「潜在保育士」の発掘と就職支援、そして保育園への短時間契約の呼びかけが重要となっています。

冒頭のセミナーでは「現在、保育園では、20代から70代、男性も含めて多様な人材での子育てが求められている」とも言います。

長野県保育士人材バンクは、保育士と園を専門員が結ぶ事業

現在、長野県社会福祉協議会が長野県より委託を受け、中南信・東北信それぞれに保育士の資格を持つコーディネーター役の「専門員」を配置。厚生労働省が運用するオンラインの「福祉のお仕事」のネットシステムを活用して、保育施設に求人登録をしてもらい、一方で潜在保育士にも登録を呼びかけ、希望者に対して短時間からフルタイムまでのマッチングを無料で行っています。

この事業の肝は、保育士として再就職しようかどうか迷っている人が、「専門員」に個別に相談できるのが特徴。また保育園・認定こども園、放課後デーなど保育施設など幅広い事業所が、求人登録でき同一の専門員に相談することができるのです。

上記は保育士の資格を持った人で働いていない人むけのチラシの一部


潜在保育士の職場復帰に協力を!

筆者は、この事業の広報戦略に関わってきました。しかし、なかなか潜在保育士へのアクセスをどうしたらいいのか手立てが見つかりません。

行動的で産後すぐに就職したい保育士は、民間のサイトや、口コミなどでいいところに就職していきます。しかし、県外から結婚で長野県に住むことになり、見知らぬ土地で子育てをする潜在保育士にとっては、就職活動はハードルが高い。そこでこの事業が役立ってくると感じました。

そして、筆者が取材の際に驚いたのは50代になって自身の子育てを終えてから保育士資格を取得し、第二の人生を保育士として貢献したいという人たちに出会ったことです。経済的な困窮の中で、長時間の共働きが必須となる社会で、早朝保育や夕方の延長保育で働いてくれる年配の保育士や、子育て中の保育士に代わってお昼休みに事務作業の合間だけサポートしてくれる保育士、そして放課後デーのような、障がいのある子どもたちのために夕方や休日だけ勤務してくれる保育士。多様な人材のニーズは高まる一方です。

どうやって潜在保育士に呼びかけ、丁寧に働くことをサポートできるのか。そんなコーディネーターの人材確保や育成が重要です。多くの市民に、この課題をもっと発信して、地域の宝である子どもたちや保育施設を応援していきたいと感じ執筆しました。

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